<大相撲初場所>◇11日目◇20日◇両国国技館

 横綱朝青龍(29=高砂)が関脇把瑠都(25=尾上)を下し、歴代単独3位となる25回目の賜杯獲得へ大きく前進した。7日目に横綱白鵬(24)から初勝利を挙げ、ここまで2敗と好調だった把瑠都を、右からの豪快な下手投げで1敗を死守した。白鵬も押し倒しで勝って1敗キープ。把瑠都をはじめ、2敗だった平幕安美錦(31)同白馬(26)も敗れ、賜杯争いは事実上、両横綱のマッチレースとなった。

 朝青龍が、188キロと十両以上で3番目に重い把瑠都を宙に浮かせた。立ち合いから左下手を引いて頭を低くつけると、最後は右下手を深く取って豪快に投げを打った。朝青龍のパワーに場内も騒然。「(持ち上げたのは)瞬間だったから。気持ちよかったね。帰ってゆっくりビデオ見るよ」。2敗力士を自らの手で破り、歴代単独3位となる25回目の優勝を大きくたぐり寄せた。

 今場所は支度部屋でも笑顔が絶えない。新顔記者が質問しようとすると「どこの社だ?

 先輩(顔じゃないってことを)教えてやってよ」と笑顔で返す。引退騒動でピリピリムードだった昨年も復活優勝を遂げるなど、初場所は朝青龍にとってゲンのいい場所だ。高砂部屋関係者は「年に1回ずつの地方場所はあちこち連れ回されるけど、東京の場合は頻度が少ない。加えて場所前は年末年始でどこも閉まっていて、出歩かなくなるからね」という。

 相撲に集中できる分、心にも余裕が生まれている。場所直前の1月8日には、都内の幼稚園を極秘で電撃訪問した。同関係者によると「群がる園児たちに笑顔でこたえて、リラックスしていた」という。また場所後の1月28日に都内ホテルで行われる、プロ野球楽天の野村克也前監督(74)の「1500勝記念パーティー」の発起人にも名を連ねている。「相撲以外の活動も積極的に参加できるようになったことで、逆に相撲への集中力が増している」(同関係者)という。

 12日目からは大関戦がスタート。「一番一番、変なこと考えずに集中してね。余計なこと、考えないように」と慎重だ。2敗力士も消え、残るはライバル白鵬だけとなった。今年の目標に掲げた「年4回優勝」の第1弾が、いよいよ現実味を帯びてきた。【山田大介】