<大相撲技量審査場所>◇13日目◇20日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(26=宮城野)が、今場所初黒星を喫し、連勝が16で止まった。大関日馬富士(27)に一方的に敗れる波乱となったが、取組直前に都内で震度2を観測する地震が発生。騒然とする場内の異変に気付き、集中力を欠いた。12勝1敗となったが、優勝争いでは依然、単独トップ。2敗の栃ノ心(23)、3敗の大関把瑠都(26)ら4人が追う展開となった。

 最後の仕切り前に、塩をまく瞬間だった。午後5時53分。茨城県南部を震源地とする地震が発生した。都内は震度2だったが、天井から宙づりの照明が揺れて、砂かぶり席の観衆がキョロキョロと落ち着かない様子で周囲を見渡す。場内は騒然とし、土俵上の白鵬も日馬富士も異変に気付いた。シーンと静まり返るはずの立ち合いの瞬間も、ざわめきは消えなかった。初めて経験する異様な雰囲気の中で、白鵬は突き、押しをいなされ、出し投げから横に組みつかれた。さらに背後を取られ、わずか5秒1で一方的に寄り切られた。

 取組後の白鵬は「(観衆が)みんなすごく騒いでいるので『何だ?』とは思ったけど、地震とは知らなかった。『何かあったのかな?』と、一瞬思った」と、集中力が途切れたことを明かした。一方の日馬富士も場内の異変に気付いたが、それが取組に影響したか問われると「気合が入っているから感じなかった」と断言。勝ち越しをかけていた日馬富士と、優勝争いで前日までに2差をつけ、独走態勢に入って心に余裕ができた白鵬。仕切りの時点ですでに勝負は見えていた。

 日本相撲協会の放駒理事長(元大関魁傑)は「地震の影響はない。集中していたら気になるわけがない」と、言い切った。だが白鵬も人の子。東日本大震災は44階の自宅マンションで遭遇し「どれだけ足腰が強くても、両足では立てなかった」と、人一倍揺れを感じて恐怖心を抱いた。泣く子供の顔が脳裏をよぎったとしても、不思議ではない。中村審判長(元関脇富士桜)は「横綱は簡単に横につかれた。地震の影響だ。もっと普段はどっしりとしている」と、かばった。

 昨年春場所以降は6連覇中で、その間は稀勢の里戦の2敗しか喫していない。稀勢の里以外に敗れたのは実に1年4カ月ぶり。「負けは負け。気持ちが空回りした。押されない自信はあったけど…」と、つぶやいた。今場所は天敵の稀勢の里を破り、3場所ぶりの全勝優勝も見えていたが「勝負は甘くないということ」と話し、ため息をついた。

 それでも優勝争いで、優位に立つことには変わりはない。今日14日目に把瑠都を下し、栃ノ心が敗れれば朝青龍と並ぶ史上1位の7連覇が決まる。地震というアクシデントで、重圧のかかる初日や優勝決定戦に弱かった、精神面の弱点を再度露呈。「あと2日。ああだ、こうだ言わずに、しっかりといきたい」と、気を引き締め直すことに精いっぱいだった。【高田文太】