<大相撲夏場所>◇初日◇12日◇東京・両国国技館

 横綱白鵬(28=宮城野)が寄り切りで栃煌山(26)を下した。朝青龍に並ぶ歴代3位タイとなる25度目の優勝へ好発進。今年1番の目標に掲げている年間最多勝記録86勝の自己記録を超えるにはもう1つも負けられない。2場所ぶりに戻った東の横綱として、盤石の強さをこの夏場所で証明する。

 白鵬の強さは心身の充実に裏付けられていた。栃煌山を立ち合いから圧倒した。「出足がいいもんだから空回りした感じ」と、万全ではない左四つのまま押し込む。勢いが良すぎて、土俵際では右腕が相手の首に回ってしまった。だが、落ち着いて右を巻き替え「2本入ったのでしっかり腰を落としました」と、最後は危なげなく寄り切った。

 一瞬ヒヤリとしたが、それも白鵬の中では想定内だった。直前の出稽古では、あえて自分の不利な体勢からの取組を繰り返した。そんな準備が心に余裕を生んだ。「普通は泳いじゃう。対応できているのがいい。それが稽古」。

 食生活を改善し、筋肉の量と質も向上させた。食事のメーンを温野菜中心に変え肉の量を減らした。細胞の機能を高めると、知人に薦められた亜麻仁(あまに)油をドレッシングに使用。一時160キロにまで増えた体重が力となった。

 先日計測した筋肉量は116キロ。担当した日体大船渡教授は「アジア人は90キロで頭打ち。陸上ハンマー投げの室伏選手でも100キロくらいだから、驚く数字」と分析した。

 反射神経でも驚異の数字をたたきだした。立ち合いと同じ姿勢で、ランプ点灯の瞬間に前に出て測定する瞬発力では、反応時間は0・171秒。序二段の付け人は一般人より速いが、それでも0・282。陸上100メートル世界記録保持者のボルトの0・146秒に肉薄している。100メートルで0・1秒違うと1メートル離れるという。

 2場所ぶりの東の横綱をもう譲るつもりはない。朝青龍に並ぶ25度目、11年秋場所以来の東京場所優勝に照準を合わす。また、それ以上にこだわるのが年間最多勝。87勝で自己記録を更新する。初場所で3敗したため、もう負けられない。【鎌田直秀】