巨人上原浩治投手の引退発表を受け、第1回WBCでバッテリーを組んだ元ロッテ里崎智也氏(日刊スポーツ評論家)が思い出を語った。

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上原さんは僕が受けたことのある中で、一番いい投手でした。はっきり覚えています。2006年(平18)の第1回WBCの準決勝、韓国戦でバッテリーを組んだ時のことです。直球も変化球も構えたところに完璧に来るんです。

当時のサインにはコースの指示やストライクゾーンを外してボールにしようというのはあったのですが、ストライクゾーンの中での高低の指示はありませんでした。低めにしか投げてこない投手もいる中、上原さんはサインの意図をくんで、李承■の内角高めに投げてきました。国際大会で、ミットを大きく動かして構える不用心はできません。わずかに高めにしか構えられない中で非常に助かりました。

あまりにも意図通りにボールが来るので「これはもし打たれたら僕のせいだな」と思いました。そんなことを試合中に考えたのは、後にも先にもその時だけでした。上原さんのことを全く心配する必要がなかったから、相手打線のことだけを考えればよく、僕にも余裕があったのでしょう。

上原さんとバッテリーを組むことがなかったら、そんな境地に達することもなかったかもしれません。貴重な体験をさせてもらったことを感謝しています。本当にすごい投手でした。(日刊スポーツ評論家)

■は火ヘンに華