王者西武が勝てない。昨年のCSファイナルステージは5試合で44失点、1試合平均8・8失点だった。今年もここまで3試合で23失点と平均7・7点を失っている。2連敗で迎え、相手先発は千賀。先制点を与えるにしても、序盤はしっかり抑えたかった。

十亀は初回から先頭を出して先制され、2回には牧原に逆球を打たれて2点を追加された。森のリードには意図がくみ取れた。松田宣に死球を与えた直後でも内川にインコースから入ったり、前夜引っ張られた中村晃には外角中心で組み立てるなど、やりたいことは伝わった。だが、いくらスコアラーが対策して捕手が用意をしても、全く予想外のところに投げられては対応できない。

技巧派ではない十亀に、四隅に投げきれとは言わない。せめて高さとコースのどちらかは間違わないでほしい。4回、牧原に打たれた2ランはカウント1-1からのど真ん中を運ばれた。振り返れば、第2戦で今井が中村晃に浴びた本塁打も逆球だった。勢いづいたソフトバンク打線は勢いだけでは止められない。もう少し投手に意図をくんで投げてほしかった。

きつい言い方をすれば、西武はシーズン中と同じ戦い方をしている。防御率4・35はパ・リーグ最下位、失策92も同最多だった。この日も失点には直結しなかったが、外崎がゴロを後逸した。143試合を戦って2ゲーム差と力が拮抗(きっこう)した相手との短期決戦。ミスは命取りになりうる。チームの士気にも影響する。シーズン中の悪かった部分が全部出ている。

対してソフトバンクは、シーズン終盤振るわなかった打撃陣が復調。千賀も快投し、1本ほしいところで出る好循環を生んだ。1試合中止を挟むことで、フル回転の中継ぎ陣も休める。ここまできたら西武は、チャレンジャー精神で捨て身で戦うしかない。(日刊スポーツ評論家)

9回裏西武2死一塁、栗山が右飛に倒れガックリする西武ベンチと辻監督(左から2人目)(撮影・栗木一考)
9回裏西武2死一塁、栗山が右飛に倒れガックリする西武ベンチと辻監督(左から2人目)(撮影・栗木一考)