阪神の新外国人ジャスティン・ボーア内野手(31=エンゼルス)が、推定150メートル弾を含む14本の柵越えを放って衝撃デビューした。

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最大の目玉といえる新外国人ボーアのバッティングは、うわさにたがわぬ迫力だった。たっぷりと間近でチェックさせてもらったが、典型的なパワーヒッターであることは間違いないね。

来日したての外国人によっては、遠くに飛ばそうと思うあまり、力に頼って上体で打つタイプが多いものなんだ。しかし、この日の打撃をみる限り、目立ったクセは見当たらず、非常に素直なフォームだった。

メジャー通算92本塁打を記録した名刺代わりの初打ちは、長打を左右に飛ばした。打撃投手から打ちやすいチャンスボールを投げられているとはいえ、スタンドインを連発したのは、下半身を使えている証拠だった。

それにちょっと珍しいのは素手で打っていたことだった。現役時代のわたしは左手にバッティング手袋をつけて、右手にははめなかった。それは右手で打ったときの感触を確かめたかったからなんだ。

もともと両手に手袋をしないのは強打者に多いから、それもスラッガーの証と言えるのかもしれないね。ここからキャンプが進むにつれて体もシャープになってくれば、さらにキレも出てくるのだろう。

指導する側に注文するとすれば「変化球を多投する」「配球がきめ細かい」などと言って、今から日米野球の違いを頭に詰め込ませないことだね。それは来日1年目で不振を極めたロサリオの反省で分かっているはずだ。

その点、ボーアは明るい性格で、周囲がそのあたりをうまくコントロールすれば好結果を招くのではないか。すべてに仕上がった時点でどういう打撃をしているかだが、まずは「4番」としての適性を十分に感じさせる内容だった。(日刊スポーツ評論家)

ランチ特打を終えたボーア(左)は、井上打撃コーチと握手を交わす(撮影・上田博志)
ランチ特打を終えたボーア(左)は、井上打撃コーチと握手を交わす(撮影・上田博志)