ボーアの打球は素晴らしかった。ネット裏から生でみたバッティングは、調子が上がらず苦労した春先の姿とは見違えるほどでした。なにより真っすぐに強いタイプですな。

これでボーアの「開幕4番」は決まりました。外国人が機能するか否かはチームの浮沈を左右する。2年目に勝負をかける矢野監督も内心ほっとしていることでしょう。

わたしが2度目の監督に就いた1985年(昭60)、リーグ優勝、日本一に貢献したバースを引き合いに出されることが多いが、ちょっとプレースタイルは違います。わたしは来日3年目だったバースを「3番」に起用した。彼は内外角どちらにも対応し、左右に打ち分ける打者でした。どちらかというとアベレージを稼ぐ巧打者だった。

ボーアは引っ張るタイプでしょう。3日の広島戦でバックスクリーン左に本塁打を放ったが、基本的には「率」より「長打」のプルヒッター。あとは対サウスポーが克服できるか。

またボーアの一塁固定に確信がもてたことで浮上するのが2年目マルテ、もう1人の新外国人野手サンズの存在です。わたしは右のサンズにも期待を寄せるが、こちらは福留、糸井との兼ね合いだろう。

今年は特に外国人枠を有効に使って積極起用する戦略は、どのチームも同じ思惑のはずです。阪神の場合も、ここまでの起用法をみていると、三塁マルテがリードしている。

しかし、そこをわたしはあえて言いたいんです。大山よ、出てこいと。確かに、この日もステップの多い三塁守備が目に留まった。8回の見逃し三振もいただけない。でも、ここから日本人の生え抜きが「幹」になって、外国人を押しのけ、チームを引っ張っていく人材が育つか。また育てることができるのか。そこを見守りたい。

(日刊スポーツ客員評論家)