広島のドラフト1位森下暢仁投手が7回6安打2失点、8奪三振と力投した。

  ◇    ◇    ◇

森下はどの球種も一級品だが、この日の組み立ては大胆だった。カットボール、スライダー、チェンジアップの割合を減らし、質のいい真っすぐと落差のあるカーブ、この2球種を軸に、7回まで勝負していた。ストレートを両サイドに投げ分け、ストライクゾーンからボールになる、キレのあるカーブはカウント球でも、勝負球としても使えた。

中盤にかけて、ギアを1つ上げて投げていたが、ストレートが抜けたり、逆球になることはなかった。あれだけの力強い投球を見せていれば、80球を超えたあたりで疲れも出てくるところだが、7回は150キロを超す直球で糸井、福留を抑えた。あの状況でフォームが崩れることなく、質のいい球を投げ切れるのは大したものだ。

驚かされたことは、もう1つある。走者がいようがいまいが、森下は捕手に対して、結構、首を振る。坂倉は年下ではあるが、新人があまり首を振ることはない。しかし森下は自分の投げたいボールをしっかりと意思表示できる。ストレートの調子の良さを本人も分かった上でのことでもあるが、自分を信じて投げ込めるのは大したものだ。ストライク先行の投球は、守りのリズムも生む。勝ちはつかなかったが、マツダスタジアムのマウンドを自分のものにしている。素晴らしい投球だった。(日刊スポーツ評論家)