序盤から両先発が持ち味を発揮した。広島野村は両サイドを丁寧に突き、ゴロを打たせる本来の投球。4回は満塁のピンチを招いたが、しっかりと押し込んでフライアウトを取るなど投球としては悪くなかった。ピンチを招いたり、失点しても粘り強く投げるのが野村の真骨頂だ。

広島は3回1死一塁から鈴木誠の打席で、一塁走者田中広がスタートを切った。結果は盗塁死も、長打を待つだけではなく、足を絡めて得点しようとする攻撃は欠かせない。動くことで相手に考えさせ、警戒心を与える。前日29日は巨人に足を絡めた攻撃で逆転されたが、広島遠藤の2四死球がきっかけ。もらった好機というのは思い切った策を講じやすい。若い遠藤にとっては、いい教訓となったに違いない。

巨人先発の田口とは1週間前に対戦している。各打者はどういう軌道で、どういう攻めをされたのか頭に入っているはず。しっかりとプランを持って打席に臨み、反省して次につなげていくことが大事になる。「広島は目標を失っている」という声も耳にする。ただ、目の前の試合に全力を尽くす。それはプロである以上変わらない。全力疾走など、当たり前のことを当たり前にやる。この日も多くのファンがマツダスタジアムに来てくれている。選手たちは戦う姿勢、勝とうとする姿を見せないといけない。選手1人ではなく、チーム全体で戦う空気を出していかないといけない。(日刊スポーツ評論家)