広島が30日、巨人戦の連敗を4で止めた。先発野村祐輔投手(31)が5回無失点の粘りの投球を見せると、5回裏に打線が応えた。鈴木誠也外野手(26)の19号2ランなどで3点を奪った。前日のリベンジを果たした広島の戦いに日刊スポーツ評論家の緒方孝市氏(51)は収穫と課題を挙げた。

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カープらしい戦い方に、前日完敗した姿はもうなかった。首位巨人に大きく離されている中でも、こういう試合ができることを広島の選手たちにはあらためて自信にして欲しい。先発野村は前回敗れた悔しさもあっただろう。両サイドに緩急を織り交ぜながら根気強く投げていた。しっかりと打者の胸元にも投げ切れており、調子も良かったのだろう。許した安打もゴロでのヒット。ゴロが多い投球は野村のバロメーターでもある。ピンチを迎えてもきっちりと投げきり、打者のバットを押し込んでいた。

5回は菊池涼の出塁から、ベンチの積極的な代打策で1死一、三塁とチャンスを広げた。田中広の打席ではセーフティースクイズを仕掛けるなど揺さぶった。最後は何とかしようとバットに当てた投ゴロ。フィールディングのいい巨人田口だが、打者走者の脚力を考えると併殺を狙った二塁送球は判断ミスと言わざるをえない。結果、二塁封殺だけで先制点が転がり込んだ。田中広は一塁走者としても2球けん制球を誘い、田口の間合いで投げさせなかったことで、主砲鈴木誠の2ランを呼び込んだ。相手のミスから揺さぶって奪った、この回の3点は巨人に大きなダメージを与えた。

だからこそ、6回の攻撃がもったいない。結果的に押し出しで1点を追加したものの、2死二、三塁から投手ケムナをそのまま打席に立たせるならば、8番菊池涼の打席でベンチも含めて1点を取る動きが欲しかった。経験のある選手とはいえ、任せきりではなく、選手とベンチが一体となって得点を奪いにいく姿勢が求められた。あの展開での1点は、相手からもらったものと、自分たちでもぎとったものとでは大きく意味が違う。自分たちで奪うことで相手にダメージを与え、試合の流れを大きく引き寄せられる。ダメ押しに近い中押し点になっていたといってもいい。

観客の上限が見直され、あらためてマツダスタジアムの大声援は、広島の選手に大きな力を与え、相手にはプレッシャーを与えるものだと感じた。まだ残り試合はある。選手たちは最後まで戦う姿をファンに見せなければいけない。(日刊スポーツ評論家)