今季レギュラーを奪おうと必死にアピールする若手の前に、補強という壁が立ちふさがる。巨人は常に優勝を求められるチームであり、毎年新戦力が加入して、チーム内の競争は厳しさを増す。

特に昨年成長した松原にとっては、今季の苦戦は免れられない。FAで梶谷を獲得し、そこに新外国人選手も加わる。松原のチーム内での序列は厳しくなるだろう。しかし、それは巨人にとっては過去にいくらでもあったことだ。

私は伊東キャンプ翌年の1980年に115試合に出場し、81年はセカンドのレギュラー争いの真っただ中、キャンプに臨んだ。しかし、81年に長嶋監督から藤田監督に体制が代わり、原(現監督)が競合の末にドラフト1位で入団すると、状況は変わった。セカンド原が試された。私は内心「冗談じゃない」と思ったが、選手起用は監督の専権事項。どうすることもできない。練習しかない。そんな時、長嶋さんからの電話が私を奮い立たせた。「ふてくされるな。必ずチャンスは来る。その日までいつも試合を想定して練習に励め」。この言葉に救われた。

開幕からベンチを温める日が続いたが、中畑(清)さんが故障し、転機が訪れる。原がサードへ、空いたセカンドに私が入った。野球の神様がくれたチャンスだと感じた。81年5月9日。大洋戦(横浜)で5打数4安打4打点。そして、そのまま打率を大きく下げず、3割5分7厘でシーズンを乗り切った。

非情な世界だ。チームが補強をするのは当然のことで、その中で競争に勝ったものしか生き残れない。今の松原も、複雑なモノを心に抱えているだろう。確かに、総合力では梶谷、外国人選手にはまだ及ばない。

だからこそ備える。必ず来ると信じ、そのチャンスに備える。そしてどう備えるか。走攻守。この3つで、常に安定して力を発揮することだ。走ならば先の塁を奪うための打球判断を含めた力量が、打撃ではヒットだけを求めるのではなく、試合状況に則して進塁打で確実に好機を広げる内容が求められる。守りにしても、打球への反応や、球際の粘りで信頼を勝ち取ることだ。

若手選手に保証されたものはない。結果で奪う。このシンプルで絶対的な指標だけを見て、食い下がってほしい。(日刊スポーツ評論家)

ロングティー打撃を行う巨人梶谷(撮影・江口和貴)
ロングティー打撃を行う巨人梶谷(撮影・江口和貴)