10連敗中のDeNAが、首位の阪神を相手に連敗ストップ。こういう大型連敗中は「何をやっても勝てない」と思ってしまうものだが、首位チームが自滅。“まさか”の勝利が転がり込んできた。自力で連敗を止めたとは言い難い試合ではあったが、DeNAの「戦う姿勢」には「見るべきもの」と「今後の戦い方」が見えた。

阪神に勝利し三浦監督(右)はナインをエアタッチで迎える(撮影・加藤哉)
阪神に勝利し三浦監督(右)はナインをエアタッチで迎える(撮影・加藤哉)

今試合の勝負を分けるのは、DeNA打線の「気迫」だと思っていた。今更、紹介するまでもないだろうが藤浪は、「超」が付くほどの荒れ球の投手。150キロ台後半の真っすぐが抜けると、右打者のちょうど頭部付近にくるため、その恐怖は半端じゃない。しかし、その恐怖に勝って腰を引かずに打ちにいければ、力んでストライクが入らなくなる弱点がある。DeNAの打者がどれだけビビッて腰を引かないかが勝負だと思っていた。

初回、先頭打者の田中俊が2球続けてセーフティーバントの構えをして見送った。結果は三振だが、続く2番の柴田も初球にセーフティーバントの構えをしていた。これは突っ込み気味に投げるとストライクが入らなくなる藤浪に対して「揺さぶり」で、チームとしてやっていこうと決めていたものだろう。プロである以上、大げさに取り立てて褒める作戦ではないが「苦しいときこそチームで戦う」という基本を実践していた。

5回表DeNA無死、オースティンは死球を受ける。投手は藤浪(撮影・加藤哉)
5回表DeNA無死、オースティンは死球を受ける。投手は藤浪(撮影・加藤哉)

初回こそ3人で無得点に終わったが、2回以降も腰の引けた打者は1人もいなかった。2回は3連続四球で1点を奪い、3回は柴田、佐野の左打者が二塁打で2点目。こうなれば藤浪が力み出すと思っていたが、その通りに3連続四球で1点を追加。5回、先頭打者のオースティンが死球を受けて、藤浪をKOした。

ただ、DeNAらしい“弱さ”もあった。6点リードした8回裏2死、セカンドベースの後方に上がったフライは、途中出場した遊撃・大和の打球だった。しかし、前進するセンター神里とセカンド柴田の動きをチラチラと見ながら背走し、突っ込んできた柴田と激突。ショートよりのフライであり、大声を出して自分で捕りにいく打球にもかかわらず、明らかに人任せにしようとしたか、集中力を欠いていたとしか思えなかった。

8回裏阪神2死、原口の飛球を追いかけた遊撃手大和(左)と接触し負傷退場となった二塁手柴田(撮影・前田充)
8回裏阪神2死、原口の飛球を追いかけた遊撃手大和(左)と接触し負傷退場となった二塁手柴田(撮影・前田充)

ミスは野球に付きもの。プロである以上、イージーミスでも「一生懸命にやったミスだから仕方ない」と片付けてはいいものではないが、下手ならば必死に練習すればいい。しかしボーンヘッドや怠慢プレーは論外。しかも大和はベテランで、途中出場した選手であれば、必死な姿を見せてプレーする立場。付け加えると、弱いチームにはボーンヘッドや怠慢プレーが多い。戦う姿勢を見せた後だけに、残念だった。(日刊スポーツ評論家)