ヤクルトが投手戦を制し、対戦成績を1勝1敗のタイとした。日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(51)が、ヤクルト高橋奎二投手(24)とオリックス宮城大弥投手(20)の投げ合いを振り返った。

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日本シリーズ2戦目は、エース同士が投げ合った初戦にも劣らない、素晴らしい投手戦だった。まずはヤクルトの先発高橋のピッチングから振り返ってみたい。

オリックス対ヤクルト 9回裏オリックス2死、力投する高橋(撮影・河田真司)
オリックス対ヤクルト 9回裏オリックス2死、力投する高橋(撮影・河田真司)

9回のマウンドに上がる高橋の姿を見て、思わず胸が熱くなった。この時点で球数は122球。この回は左打者の吉田正から始まることもあったのだろう。しかし、私がコーチを務めていた2年前からは想像もできない光景だった。当時の高橋はいい球を投げながらも、少し投げただけで腰が張り、投げては抹消を繰り返していた。球数も50球ぐらいで限界。それが133球を投げての完封勝利。当時からは想像できない姿だった。

投球内容を見ても、格段に成長している。5回までは毎回ヒットを打たれ、先頭打者を3度も出していたが四球は1。昨年まではクイックモーションが苦手で、走者を出すと制球を乱して崩れるケースが多かった。しかし、シーズン中と同様に、日本シリーズの大舞台でも“弱点克服”したことを証明した。

オリックス対ヤクルト 7回表ヤクルト2死一塁、中村を三振に抑え、ガッツポーズする宮城。後方左は村上(撮影・河田真司)
オリックス対ヤクルト 7回表ヤクルト2死一塁、中村を三振に抑え、ガッツポーズする宮城。後方左は村上(撮影・河田真司)

負けはしたが、オリックスの先発宮城にも心を打たれた。高卒2年目で開幕からローテーション入りし、13勝を挙げた。宮城の存在がなければオリックスの優勝はなかったが、それでもシーズン終盤には疲れが出て調子を崩していた。今シリーズでの状態を注目していたが、5回までの投球はエースの山本よりもいいのではないかと思えるほどの内容だった。

先発前日の宮城のコメントに、この登板にかける執念を感じていた。第1戦で好投した奥川に対して「まだちゃんと中6日で回っていないにもかかわらず9勝を挙げたり、中6で回った時にどうなるのか気になるのもあります」とコメント。同じ高卒2年目として強烈なライバル心を持ち、一見、のほほんとした朗らかなオーラを出しているタイプだが、プロとして必要な負けず嫌いな一面を感じさせた。今試合は「俺だってしっかり間隔を空けて投げられれば、これぐらい投げられるんだ」という意地と実力を見せたのだと思う。

この試合はストライクゾーンが狭く、投手として厳しい条件だった。2投手とも、メンタルの強さも見事だった。これで1勝1敗。両チームとも実力は伯仲しているし、最後までもつれると思う。そしてもう1度、2人のピッチングを見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)