開幕から好調の巨人だが、今試合では2年目の山崎伊がプロ初勝利を挙げた。右肘を手術してプロ入りしただけに昨年の登板はなし。今季がルーキーイヤーのようなものだが、起用法によっては十分に新戦力として計算できる内容だった。

特別に球威があるわけではない。針の穴を通すようなコントロールがあるわけではない。しかし、真っすぐも変化球も、プロで戦えるレベルには達している。そして何よりもいいな、と感じたのは「センス」と「闘争心」だった。

2回先頭の牧にセンターオーバーの二塁打を打たれた。同学年でもあり悔しかったのだろう。4回2死での2度目の対戦に注目していた。内角にシュートを4球続けてカウントは3-1。続く外角スライダーがファウル。そして最後は内角スライダーで見逃し三振に仕留めた。投手の気持ちを考えて強気にリードした岸田の配球もよかったが、投げ込んだ山崎伊も大したもの。「次は打たせない」という闘争心を感じた。

野球センスも感じたのは、打席の内容だった。2回無死一、二塁。サインは定石通りの送りバントだった。初球と2球目は真っすぐをファウル。アッという間に追い込まれたが、2つのファウルの内容は違った。1球目は高めのボール球を三塁側へファウル。これだけならどうということはないが、2球目は三塁線にしっかりとボールを殺してのファウル。そして3球目は一塁側に打球を殺し、見事に決めた。

右投げ左打ちというのは、利き手が下にあるため、送りバントが下手な選手が多い。山崎伊は投手であり、バント経験も少なかったと思う。それでいながら、1、2球目と適応能力を見せた。そして3球目はファウルで三振にならないように一塁側に転がしていた。誰かからアドバイスされたのかもしれないが、投手でありながらしっかりと状況に対応していた。

2打席目は普通に送りバントを決め、6回2死三塁の3打席目は初球の真っすぐを打って一、二塁間を破るタイムリー。打撃に自信があるのだろうが、スイングもよかったし、狙い通りに思い切って振っていくセンスを感じた。

キャンプで見た時は手術明けの状態が気になったが、ブルペンでの投球はまずまずだった。しかし開幕ローテに入りながら、いまひとつ結果が出ずに抹消。この試合でどういうピッチングができるかが、今後のカギを握ると思っていた。

6回無失点。開幕でいまひとつだったのは、ケガで出遅れてしまった負い目から飛ばしすぎていたのだろう。失敗を取り返せる能力は大事で伸びる資質を持っているとも言い換えられる。休ませながら先発させれば、それなりのピッチングはできることを証明した。

赤星、堀田とともに、無理をさせないように先発させれば、それなりの結果はついてくると思う。さらに新外国人のシューメーカーと、評判の高いアンドリースがローテに加われば先発陣は万全だろう。まだ5月になっていないが、セの他球団は巨人マークを強めていかないと独走態勢を作られる可能性がある。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対巨人 2回表巨人無死一、二塁、送りバントを決める山崎伊。投手東(撮影・足立雅史)
DeNA対巨人 2回表巨人無死一、二塁、送りバントを決める山崎伊。投手東(撮影・足立雅史)