ゲーム差がありすぎるとはいえ、首位チームと2位に浮上したチームの対戦だった。ペナントレースを盛り上げるためにも広島に頑張ってもらいたいという気持ちを持っていたが、そんな思いが強すぎたのかもしれない(苦笑い)。序盤で試合は決まってしまった。

残念な試合にはなってしまったが、試合を決定づけたのは広島の初回の攻撃ではない。一挙、6点を挙げたが、初回に大量点を援護してもらった先発投手というのは、意外と投げにくくなる。広島の先発・森下がどういうピッチングをしてくるかで、まだまだ勝敗は分からなくなる可能性はあった。

投手心理を想像してほしい。まず、無駄な四球は厳禁で、どんどんストライクを先行して投げなければいけない。そうかといって、初回から全力で投げる投手もいない。力の加減が難しいし、特に初回の立ち上がりは、えたいの知れない難しさがある。

先頭打者の山崎に対し、どういう投球をするか注目していた。3球でカウント1-2に追い込んだ。ここまではよかったが、4球目のカーブをセンター前にはじき返された。

投手心理を見越した打者は、ストライク先行で投げてくるピッチャーに対して積極的にバットを振ってくる。早いカウントで打ち損じてくれればいいのだが、そう簡単にいかない。先頭打者の山崎にヒットを打たれた森下も、やりにくさを感じたはずだ。

しかし2番打者の元山は初球をセーフティー気味にバント。打球は投手前に転がって、記録は送りバントになった。この場面で送りバントは考えにくいが、セーフティーバントなら三塁か一塁のライン際を狙うのがセオリーだろう。

ベンチの高津監督もプレー直後にコーチに話し掛けていた。誰かバントのサインを出したのか確認していたのかもしれない。それぐらい理解しがたいプレーだった。

これで森下は楽になっただろう。坂口を内角の真っすぐで空振り三振。一塁が空いているし、村上だけはストライクをそろえる必要はない。ストレートの四球で、次打者のサンタナを空振り三振に打ち取り、難しい立ち上がりを乗り切ってリズムをつかみ直した。

もともと元山はコロナ離脱者が続出してスタメン出場している選手。経験も浅く、このプレーを追及するつもりもない。

ただし、コロナ対応は見直す時期にきている。日本ではスクリーニングで定期的にPCR検査を行うが、メジャーでは今、症状が出なければ検査は行われない。いろいろな意見はあるだろうが、改めて考えさせられてしまった。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対広島 4表広島無死、本塁打を放った会沢(左)を迎える次打者森下(撮影・丹羽敏通)
ヤクルト対広島 4表広島無死、本塁打を放った会沢(左)を迎える次打者森下(撮影・丹羽敏通)