潤沢な資金で補強したソフトバンクだが、キャンプ初日を見て、編成から現場へ、しっかりバトンは渡されたと実感した。

メイン球場では10カ所で野手が黙々とバットを振っている。ティー、マシン、ロングティー、バント練習。まったく選手に待ち時間がない。よくあるバットを支えにして、暇を持て余している姿は皆無だ。一切の無駄を排除している。それも初日からだ。まさにフルスロットルでバットを振り込んでいた。

この無駄のないスタイルで90分間、休まずバットを振っていた。およそ1000スイングに迫る濃密さだ。初日に行われたメニューでは、実質的な最初の全体練習で、このメニューに取り組める。チームとして今季にかける用意周到さがうかがえる。

キャンプインしたばかりで、これだけのスイング量をこなし、どの選手もこの時期としては目いっぱいに振っていた。野手全体の意識の高さと、それを引き出す首脳陣、スタッフの思惑が合致した面を見させてもらった。

この日、沖縄・名護では日本ハムが紅白戦を実施している。球団によっては第1クールでの練習強度に差は出つつある。私はオリックスからソフトバンクの順番でキャンプを回ったが、オリックスはソフトバンクに比べると、やや負荷の少ないメニューに映った。

連覇しているオリックスだけに、結果が出ているチームが方針を変える必要はない。それぞれの球団ごとに首脳陣が練った第1クールだとは思うが、時代はどんどん進んで行く。選手の気質がより勤勉になっていく。オフの間もトレーニングを継続するばかりか、新しい練習方法を取り入れるなど、体の手入れには高い意識が見られる。

これからは、今までよりもさらに選手を信頼し、強度を高めたメニューからスタートする球団が増えていくのではないか。そうすることで、仕上がりの早い若手はどんどん実戦で試され、チャンスも増える。ソフトバンク、オリックスの対照的なキャンプの入りを見て、オフの結末はどうなるのだろうと、興味は尽きない。(日刊スポーツ評論家)