まだ空は薄暗い午前7時、巨人が練習を行う木の花ドームに入ると、ティー打撃をするバットの音が響く。これだけの人数が早朝からバットを振っている光景は迫力がある。だが、すぐに個々のスイングに目が止まる。いくつかの留意点が出てきた。

回数をこなすことに集中する力ないスイング。間合いが空きすぎる選手。練習量の確保を主眼とした試みと理解している。それを踏まえた上で、同じバットを振るにも、意識の持ちようで中身は大きく変わってくると、指摘したい。

主力と若手を交ぜた3人1組のチーム制で、チームごとにスイング数を競う遊びの部分がある。必然的に若手はスイングを稼ぐことに夢中になる。導入部分はどんな形でもかまわない。アイデアを出し、実行しながらのトライ&エラーに感じた。

個人名を出して申し訳ないが秋広優人のスイングは、数をこなすだけに見えた。同チームの先輩たちに迷惑をかけまいと、回数だけに特化しているようだった。

インパクトの瞬間に力を込めるところは省略せず、スイングの中に強弱はつけてほしい。せっかく振るのだ。その1スイング1スイングが血肉となるためには、もっとも大切なタイミングを念頭に、インパクトへの意識は一瞬たりとも忘れてほしくない。

私も同じようにたくさん振ってきた。そして、1箱およそ120球を振る時、伊東キャンプでは高めだけを徹底的に振らされた。それは脇を締めるため、腕の使い方を覚えるためだった。次は低めのボールを振る。これは膝の柔軟性を生かすテーマがあった。

そうして、最初は高め、低めのテーマごとに、30球ほどしか満足できるスイングができなかったが、やがて1箱を楽々とこなせるようになった。その時はじめて、体に覚えさせることができ、私のバッティングは先に進めた。

私にとって巨人は何よりも大切なチームだ。そのチームに、私も育てていただいた恩義がある。それに報いるには、知りうる限りの技術を後輩に伝える義務もあると感じる。

今回、大久保コーチが率先してはじめたアーリーワークに対し、忌憚(きたん)のない意見を言わせたもらった。それはすべて巨人を思うがゆえの助言であると受けて止めてもらえれば幸いだ。(日刊スポーツ評論家)

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打撃練習を行う巨人秋広(左端)。右から宮本氏、原監督(撮影・江口和貴)
打撃練習を行う巨人秋広(左端)。右から宮本氏、原監督(撮影・江口和貴)
ダッシュで巨人秋広(右)を追い掛ける中田翔(撮影・江口和貴)
ダッシュで巨人秋広(右)を追い掛ける中田翔(撮影・江口和貴)
ダッシュで巨人秋広(右)を追い掛ける中田翔(撮影・江口和貴)
ダッシュで巨人秋広(右)を追い掛ける中田翔(撮影・江口和貴)
ダッシュ競争で巨人萩尾(左)に敗れ、倒れ込む秋広(撮影・江口和貴)
ダッシュ競争で巨人萩尾(左)に敗れ、倒れ込む秋広(撮影・江口和貴)
守備練習でジャンプする巨人秋広(撮影・滝沢徹郎)
守備練習でジャンプする巨人秋広(撮影・滝沢徹郎)