日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)が、開幕遊撃レギュラーを争う小幡竜平内野手(22)の覚悟に納得した。「2番遊撃」で2安打を放つだけでなく、守備と走塁でも「出し切ったプレー」を披露。WBCを戦う侍ジャパン・ヌートバーを例にあげ、泥臭さの継続を願った。【聞き手=佐井陽介】

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アウトこそ奪えませんでしたが、遊撃小幡選手の「限界まで出し切ったプレー」から今季に懸ける覚悟を読み取りました。5回無死、日本ハム9番江越選手の三遊間へのゴロをバックハンドでキャッチし、素早く持ちかえて一塁へワンバウンド送球。間一髪でセーフにはなりましたが、投手を鼓舞するワンプレーになったのではないでしょうか。

同じ安打にしても、守備陣が出し切ってくれたか否かで、投手心理は大きく変わってきます。たとえば間を抜かれたゴロならば、飛び込んでも届かなかったか、ハナから諦められたかで印象に違いが出てくるのは当然です。「飛び込めば捕れたんじゃないか」「投げればアウトにできたんじゃないか」なのか「あれでセーフになったら仕方がない」なのか。この日の小幡選手のようなプレーであれば、投手は次に切り替えやすくなるものです。

小幡選手は9回にも当たり損ねのゴロに猛チャージして内野安打を阻止。走者としても1回1死一塁、ボテボテの一ゴロが処理される間に迷わず三塁を陥れています。9回は左前打で勢いあまって二塁を狙いかけて挟まれましたが、それも前向きな姿勢の表れ。昨季まではどちらかといえばスマートなイメージでしたが、今季は必死さと泥臭さを今まで以上に感じます。「絶対にレギュラーを奪うんだ」という決意が体を突き動かしているのでしょう。

侍ジャパンのヌートバー選手を見ていても分かる通り、常に120%を出し切ろうとする「野球小僧感」は仲間に勇気を与えるものです。青柳投手や西勇輝投手、伊藤将投手ら先発陣に「ゴロピッチャー」が多いチーム状況で、小幡選手の守備範囲と強肩は誰の目にも魅力的。このまま泥臭いプレーを貫けば、木浪選手との遊撃争いは開幕直前までもつれるのではないでしょうか。(日刊スポーツ評論家)

阪神対日本ハム 9回裏阪神無死、小幡は左前打を放つ(撮影・上田博志)
阪神対日本ハム 9回裏阪神無死、小幡は左前打を放つ(撮影・上田博志)