阪神も、ヤクルトも、両者譲らない3連戦になった。4時間29分。どちらも1点を守り抜いたが、逆に1点が奪えなかったとも言えた。

梨田 いかに先手を打つことが大事か。確かに競った戦いだが、阪神が初回に1、2点とっておけばゲーム展開はガラリと変わっていたはずだ。ヤクルト先発吉村を2四球と大山の中前打で1死満塁に追い詰めたのに、佐藤輝、板山の後続が倒れた。才木が素晴らしい投球をみせただけに悔やまれた。

この3戦で顕著だったのは、ヤクルト中村に配球のさえを見せつけられたことだ。阪神は終盤の7、8、9回に先頭打者が出塁するが「あと1本」が出なかった。

梨田 もう1つ打線がつながらなかった陰には、中村のリードのうまさが隠されていた。例えば8回に代わった清水から大山が二塁打で出塁したが、佐藤輝は観察され尽くされた末の空振り三振だった。続く原口には2-2からわざわざボールを投じられ、カウント3-2にしてから勝負された。次の梅野まで3者連続の空振り三振は、いずれもフォークが最終球だ。9回1死一、二塁、中野にいちかばちかのインコースのシュート、ノイジーはカットボールを見せ球にされ、やはりシュートで遊ゴロに仕留められた。中村には投手のいいところを引き出されたし、各打者の読みを外された。そこにピッチャーが応えているのも見逃せない。

ヤクルトは「打」のイメージが強かったが、フタを開ければ、12球団トップのチーム防御率0・77が示すように、投手力がけん引している。

梨田 セ・リーグの戦況を見る限り、阪神、ヤクルトの一騎打ちになりそうな気配を感じる。阪神は佐藤が心技ともに変わってこれるかどうか。どちらのチームがいつ打線がかみ合ってくるかにかかっている。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

阪神対ヤクルト 10回裏阪神1死、佐藤輝は空振り三振に倒れる(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 10回裏阪神1死、佐藤輝は空振り三振に倒れる(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 2回表ヤクルト2死、右前打を放つ中村(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 2回表ヤクルト2死、右前打を放つ中村(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 9回表ヤクルト1死、湯浅は中村(左)を中飛に仕留める(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 9回表ヤクルト1死、湯浅は中村(左)を中飛に仕留める(撮影・加藤哉)