現役時代は阪神一筋22年、4番や代打の神様として活躍した日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(53)が、試合をチェック。2本塁打した佐藤輝明内野手(24)の打撃を分析しました。【聞き手=松井清員】

 ◇ ◇ ◇

佐藤輝の2発はお見事でした。特に5回の第2打席で打った1本目は、本当にいい打ち方でした。真っすぐ待ちのところに来た変化球に泳がされて、最後は右手1本でした。でもヘッドが走っているから、右中間のあそこまで飛ぶのです。

打者はいかにヘッドを走らせるかが勝負です。そのためには、スイングした時、両手の力の入れ具合は均等が理想です。でも佐藤輝のような左打者の場合、強く振ろうという気持ちが強過ぎると、捕手側の左手に力が入ってバランスを崩します。今年苦しんでいるヤクルト村上も同じです。速い真っすぐに負けまいと振っているつもりが、逆にヘッドが走りません。バットが出てこず、振り遅れます。佐藤輝が真っすぐで打ち取られた2回第1打席の三邪飛もそうでした。左手が勝ち過ぎて顔は右翼を向き、“あっち向いてほい”のような打球。でも2打席目は両手のバランスが良かったので泳いでもヘッドが走り、本塁打にできました。

2本目もまずまずのバランスでした。気分良く6回の第3打席はしっかり四球を選び、肩の力を抜いて打席に立てたこともあるでしょう。課題の内角高め、厳しい真っすぐでしたが、肘をたたんでさばきました。差し込まれ気味でしたが、左手が勝ち過ぎなかったのでヘッドが走った。集中力もあり、いい流れに乗って打てた1発に映りました。

完全に目覚めたかどうかはこれからです。いかにこの日の良い感覚を忘れずに続けられるか。打ちたい思い、焦りが強過ぎると、左手に力が入り過ぎます。もう少し右手に意識を持っていくと、自然とポイントも前になってヘッドが走り、インコースもさばけるはずです。同じ左打者のレッドソックスの吉田選手が泳ぎ気味に本塁打しているのは、いいお手本だと思います。左手の力を抜くのは怖いかも知れませんが、怖がってはいけません。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 8回表阪神無死一塁、右越え2点本塁打を放った佐藤輝(左から2人目)を迎える岡田監督(同3人目)(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 8回表阪神無死一塁、右越え2点本塁打を放った佐藤輝(左から2人目)を迎える岡田監督(同3人目)(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 8回表阪神無死一塁、佐藤輝は右越え2点本塁打を放つ(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 8回表阪神無死一塁、佐藤輝は右越え2点本塁打を放つ(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト無死一塁、2点本塁打を放った佐藤輝(中央)を迎える岡田監督(右)(撮影・狩俣裕三)
ヤクルト対阪神 8回裏ヤクルト無死一塁、2点本塁打を放った佐藤輝(中央)を迎える岡田監督(右)(撮影・狩俣裕三)