阪神が今季初の5連勝で単独首位をキープした。

先発の村上頌樹投手(24)は5回4失点と苦しみながら3勝目(1敗)。阪神OBで日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)は5回にオール直球勝負で適時打を浴びた場面に着目し、「貴重な経験になった」とさらなる進化に期待した。【聞き手=佐井陽介】

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村上投手は決して悪い意味ではなく、まだ怖いもの知らずだったのかもしれません。興味深かったのは5-0で迎えた5回2死一、二塁、3番細川選手への投球です。坂本捕手の意図もあったのでしょうが、7球すべてに直球を選択。最後はフルカウントから高めのボールで左前適時打を許しました。あらためて1軍にいる打者のレベルの高さに気付いたのではないでしょうか。

このゲームは3連戦のカード頭。バッテリーは先々の駆け引きも見据えて「こういう場面で直球を続けるパターンもあるよ」と印象づけるため、わざと直球を続けたのかもしれません。ただ、個人的には「おっ、めっちゃ強気だな」と少し驚きました。フォークでもカーブでも1、2球抜いたボールを投げれば、打ち取れる確率は格段に上がっていたはずだからです。もちろん直球のみで抑え込めば自信になりますが、今回はそうはいきませんでした。今後に向けて貴重な経験になったと感じます。

さらに言えば、続く4番石川昂選手に対する勝負の1球も少しもったいなかった。2死二、三塁。2ボール2ストライクからのフォークがストライクゾーン低めギリギリに乗っかってしまい、右中間席まで3ランを運ばれました。直前の1球は低めいっぱいの直球で見逃しストライク。続く1球はフォークをボールゾーンに落とせていれば、空振りなり凡打を誘えた可能性は高かったでしょう。

村上投手は試合前時点で防御率0・28。今季はまだ1失点しかしていませんでした。まだまだ怖いもの知らずでいいと思いますし、イケイケの勢いは今後も大切にしてほしいものです。ただ、1軍レベルのクリーンアップは1個のミスが命取りになるケースも多々あります。それは実際に経験してみないと体感できないこと。この1試合は村上投手にとって大きな糧となるのではないでしょうか。(日刊スポーツ評論家)

中日対阪神 5回に4失点し悔しそうな表情でベンチに引き揚げる村上(撮影・上田博志)
中日対阪神 5回に4失点し悔しそうな表情でベンチに引き揚げる村上(撮影・上田博志)
中日対阪神 力投する阪神先発の村上(撮影・上田博志)
中日対阪神 力投する阪神先発の村上(撮影・上田博志)
中日対阪神 阪神先発の村上は1回を無失点に抑え笑顔を見せる(撮影・上田博志)
中日対阪神 阪神先発の村上は1回を無失点に抑え笑顔を見せる(撮影・上田博志)
中日対阪神 2回裏中日2死満塁、福谷の打球にジャンプする村上(撮影・前岡正明)
中日対阪神 2回裏中日2死満塁、福谷の打球にジャンプする村上(撮影・前岡正明)