18年ぶりの優勝を決めた阪神が16安打9得点の猛攻を決め、2位広島に圧勝した。5番佐藤輝明内野手(24)が1回に先制の右前2点タイムリーを放つなど4安打3打点。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(39)は大砲の課題克服に太鼓判を押した。【聞き手=佐井陽介】

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相手打者が勢いづいている時、バッテリーは内角攻めから崩しにかかるものです。この日の阪神佐藤輝明選手に対する攻めもそうでした。4打席目までに4安打3打点で迎えた8回2死一、三塁での5打席目。広島河野投手をリードした坂倉捕手は4球連続で内角にミットを構えました。結果は内角カットボールで三邪飛。結果は特筆すべきものではありませんでしたが、その過程に確かな成長を感じたのも事実です。

1球目、佐藤選手は体の近くに投じられた147キロ直球を難なく見逃しました。もちろんボール球ではありましたが、余裕を持って見切った姿に投手目線で嫌らしさを感じました。1、2年目、そして3年目の今季前半もまた相手バッテリーは佐藤選手に対して「困ったら内角高めの速いボール」を多用していました。課題とされてきたコース、高さに投げれば、高い確率で振りにきて空振り、凡打を奪えたからです。ただ、最近の佐藤選手はひと味違います。

内角高めを攻められても、ムキにならず冷静に見極める。すると投手はストライクゾーンで勝負せざるを得なくなる。「少しでも甘く入ると痛打される」という重圧が失投を呼ぶ。いわゆる「あんぱいゾーン」が通用しなくなり、怖さがより増した印象です。夏場以降の佐藤選手は得意ゾーンにボールを誘い込めているからか、打席内でも今までにない落ち着きを感じます。ステージをワンランク上げたと表現しても大げさではありません。