阪神が劇的な逆転勝利で38年ぶりの日本一に王手をかけた。2点ビハインドの8回。2番手山崎颯に連打を浴びせ、近本光司外野手(28)の右前適時打で1点差。なおも1死二、三塁で森下翔太外野手(23)の左中間適時三塁打で逆転に成功した。阪神元監督で85年日本一メンバーの真弓明信氏(70=日刊スポーツ評論家)が解説した。

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エラーで2点目を失った阪神にとっては、あまりにも大きい逆転勝ちだった。8回の場面、森下が決勝打を打てたのは、追い込まれてから、打撃の基本に立ち返れたことにある。

前の打席までは、バットを振り上げてライナーやフライを打とうとしていた。これではバットはボールの上をたたき、ゴロになる。ましてやオリックス田嶋のキレのある直球には合わない。自分のフォームで打ちたいということを意識し過ぎていた。8回の打席はファウルとなった4球目までそういうスイングだった。これでカウント2-2。5球目は浮いたフォークをハーフスイングでファウル。ここが転換点になった。

いい意味で当てにいく姿勢、言葉を変えれば、食らいつく打撃になった。最後は7球目の低め直球をとらえたが、スロー再生で見れば分かるが、バットが最短距離で出ている。バットを上からたたいただけだが、この打撃がライナーやフライになる。ここ一番の集中力で、基本の打撃ができた。こういう土壇場の心理状態で、なぜこういう打撃ができたのか、ビデオを見返してほしい。

その一方で森下には7回のプレーを反省してほしい。二塁中野が後ろにはじいた打球を素手で捕りにいくのは外野手としてはありえない。打者走者の動きが気になったのかもしれないが、最も大事なのは、三塁まで進んだ一塁走者だ。慌てずにグラブでしっかりと捕球すれば、致命的なエラーにはならなかった。

オリックスはブルペンにエース山本を入れた。救援で本当に起用する考えがあったのか分からないが、仮に投入しても、第5戦を取れば、第6戦以降は宮城、東の先発陣で本拠地での日本一を決められる計算があったのだろう。裏を返せば、阪神はこの試合を落とせば、一気に苦境に立たされたはずだ。この1勝はあまりにも大きい。第6戦は先発村上で一気に日本一を達成する流れができた。

阪神対オリックス 8回裏阪神1死二、三塁、森下(中央)の2点適時三塁打に盛り上がる阪神ナイン(撮影・菅敏)
阪神対オリックス 8回裏阪神1死二、三塁、森下(中央)の2点適時三塁打に盛り上がる阪神ナイン(撮影・菅敏)