実力通りの結果と言ってしまえばそれまでだが、すでに決勝進出がなくなっているオーストラリアとはモチベーションの差もありすぎる。日本チームがコールド勝ちの圧勝で、1位通過を決めた。ただ、今大会は若手主体の大会。勝ち負けよりも数年後に日の丸を背負って戦う選手の育成が主眼だと思う。そういう意味で先発した早川のピッチングを注目していた。

日本対オーストラリア 日本先発の早川(撮影・足立雅史)
日本対オーストラリア 日本先発の早川(撮影・足立雅史)

5回を投げてパーフェクトピッチング。3回は3者三振に打ち取るなど、7奪三振で、文句なしの内容だった。しかしはっきり言うと、あまりにも実力が違いすぎるため、この試合だけで評論することはできない。私なりに今後、早川が飛躍するため投球について考えてみた。

5回に最後の打者を見逃し三振に打ち取った球は、内角低めの真っすぐだった。素晴らしい球であり、バッターも手が出なかった。しかしカウントは2ストライク。2死でもありバッターは1発狙いできていることを考えれば、もっと厳しく攻めるべきだった。

重箱の隅をつつくような指摘に聞こえる人もいるだろう。しかし負けたら敗退が決まるような短期決戦では、不用意に打たれたホームランが致命傷になる場合が多い。球数を少なくする意味で3球勝負は賛成だが、早川の弱点とも隣り合わせになる球だけに、あえて触れておこうと思う。

日本対オーストラリア 5回裏オーストラリア2死、三振に倒れるルーク・スミス。投手早川(撮影・菅敏)
日本対オーストラリア 5回裏オーストラリア2死、三振に倒れるルーク・スミス。投手早川(撮影・菅敏)

早川の今季の成績は96回2/3を投げて13本塁打されている。なぜ被本塁打が多いのか? 左打者の内角に投げるのを苦手にしているし、右打者に対しても甘く入るケースが多い。バッターからすれば、早川の一番の武器は右打者の内角、左打者の外角に決まるクロスファイアだろう。それでも裏を返せばバッターが一番、意識を強めている球種であり、甘く入れば長打にもなりやすい。この辺の意識をもっと強く持っていれば厳しく投げられたはずだし、自らの弱点克服のために前進できると思う。

同じようなタイプで、格上の左腕として宮城と今永を挙げたい。宮城は146回2/3を投げて7本塁打。早川より左打者の内角を攻められるし、右打者の内角も厳しくついていける。今永は148回を投げて17本塁打。早川と同じように左右の打者に対して内角が甘く入って1発を食らうケースが多い。しかし奪三振は174。球のキレが早川とは格段に違う(早川は78奪三振)。

宮城のように内角への制球力を磨くか、今永のようにボールの質そのものを上げていくかすれば、日本を代表する左腕に成長できる。投げている球を見れば、2ケタ勝てないのが不思議でならない。それだけに格下相手にも向上心を持って投げてほしいと思い、あえて指摘させてもらった。

それにしても相手のレベルには問題がある。韓国戦では隅田がベースカバーに遅れ、今試合でも初回無死一、二塁からのダブルスチールに一塁走者の小園がスタートが遅れてアウトになった。完全なボーンヘッドで、やってはいけないミス。やはりレベルが低い相手と試合をすると、集中力を欠いたミスが多くなるが、お客さんはお金を払って観戦してくれる。相手にかかわらず、プロとして恥ずかしくない試合を見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)

日本対オーストラリア お立ち台で笑顔を見せる早川(左)と藤原(撮影・足立雅史)
日本対オーストラリア お立ち台で笑顔を見せる早川(左)と藤原(撮影・足立雅史)