宮崎巨人キャンプの初日は、今にも振り出しそうな空模様。アップは木の花ドームから始まった。練習場の全体が見渡せるように、ブルペン後方で見ていたら、キャッチボールを終えた菅野が誰よりも早くブルペンに入ってきた。

やる気満々に見え、真っさらなマウンドで投げ始めた。もちろん、テレビカメラが並び、鈴なりのメディアがいる。しかし、菅野はそんなことには目もくれず、ブルペン捕手のミットめがけて正確に投げ込んでいた。

おそらく、5~6割くらいの力加減ではないか。だが、そのボールの仕上がり具合、キレはかなり良かったと感じる。受けていたブルペン捕手が、私の目からすると若干、菅野のボールに圧倒されるキャッチングに映った。その後、他の投手も受けていたが、その時はきっちり止めていた。

つまり、初日、それも最初に菅野のボールを受けたことを割り引いたとしても、それだけ菅野のボールは生きていたのだと、私は感じた。投げ始めてから、すぐに捕手を座らせたが、ほとんどミットは動かない。これが、本来の菅野のボールだ。制球されたキレのあるボールが、今季は十分に期待できるのではないか。まだ、初日、そこまで強く断言はできないが、そう思わせるくらいの、ブルペン一番乗りと映った。

取材を進めていくうちに、杉内投手コーチが、キャンプ初日からブルペンに入れるよう準備しようと方針を伝えていたことが分かった。なるほどと、納得がいくと当時に、その中でもエース番号「18」の菅野が誰よりも早くブルペンに入ったことで戸郷、山崎、大勢らも続々とブルペン入りしたのだろうと察しがついた。

いずれも、今季フルに活躍してもらわなくてはならない軸となるべき投手陣だ。杉内コーチの方針はもちろん阿部監督の意向を踏まえたもののはずで、それを初日からきっちり実行したところに、阿部新監督始動日の象徴的なシーンに感じた。

さらに言うなら、ブルペンの捕手陣はほとんどが人工芝のスパイクを履いていた。私は、ブルペンで人工芝用のスパイクを履いているか、キャッチングで膝を突いていないか、そこをチェックする、いわゆる「ブルペン警察」。全員がスパイクで受けていたのは、とても良かったと感じた。

中でも、岸田は膝を突かずに受けていた。受けたのはおよそ100球だろう。そこで、最初に来たワンバウンドをきっちり止めていた。フォークボールだったが、キャンプ初日、その最初のワンバウンドをしっかり止めたことに、私は価値を見る。

キャンプでの最初の1球は、今季最初の1球ということだ。つまり、無二の1球とも言える。公式戦での最初のワンバウンド、最初の盗塁でのセカンドスロー。最初にしっかりできるかどうか、それが私にとって重要で、唯一無二のボールをしっかり止める、投げることができれば、それは確かな自信につながるのだ。

「ブルペン警察」の私からすれば、キャッチングで捕手が膝を突く、突かないは、好みで言えば、突かない方がいいと感じる。だが、そこは野球の技術も日々進歩している。膝を突いたとしても結果が変わらないのであれば、そこは私も単なる好みだけで判断せず、しっかりアップデートしながら考察できるよう、各キャンプ地を巡り、つぶさに自分の目で確かめたい。

10時スタートのアップから、木の花ドームに選手の声が響き、活気は感じた。阿部監督の下で、巨人の巻き返し元年がスタートした。初日で全てが分かるほど、簡単はことではない。ただ、初日から見るものに乏しいようでは寂しい。そういう意味でも、活気も中身もある出発だったと強く感じる。(日刊スポーツ評論家)

ブルペンで投球する巨人西舘(撮影・鈴木みどり)
ブルペンで投球する巨人西舘(撮影・鈴木みどり)
キャンプ初日、ブルペン投球する巨人西舘(右端)のもとには大勢の報道陣が詰め掛けた(撮影・浅見桂子)
キャンプ初日、ブルペン投球する巨人西舘(右端)のもとには大勢の報道陣が詰め掛けた(撮影・浅見桂子)