沖縄キャンプ初日から3日間、阪神の1、2軍を行脚させてもらいました。門別投手や野口選手ら“新鮮力”が注目を集める中、ひそかに納得したのが木浪選手の地道な取り組みでした。2日目は2軍キャンプ地のうるまから1軍キャンプ地の宜野座に移動。若手内野手の守備練習を見た直後だったからか、木浪選手の遊撃守備に懸ける意識の高さをより感じたのです。

この日、木浪選手は宜野座ドームで1人、ノックを受けて二塁送球という流れを黙々と繰り返していました。わざと難しいバウンドのゴロを打ってもらい、打球への入り方やバウンドの合わせ方の確認を続けていました。ただ捕るだけでなく、投げるための姿勢で捕る。前に出るのか後ろに引くのか、瞬時の判断を体に染みこませる。そんな基礎練習をすごく大事にしているのでしょう。正直に言えば、その直前に見た2軍内野手たちとの差はさらに広がりそうだと感じました。

今2軍で二遊間を争う内野手の多くは20歳前後。22歳遠藤選手に21歳高寺選手、19歳戸井選手、ともに高卒ルーキーの山田選手、百崎選手はもちろん皆、有望株です。ただ、自分が目にしたノックではゴロにバウンドを合わせられず衝突したり、ちょっとしたイレギュラーで簡単にはじいたりトンネルするシーンも少なくありませんでした。まだ成長過程にある彼らのプレーを見た直後だったから余計に、木浪選手の安定感と練習中からの意識の高さが際立って映ったわけです。

木浪選手は昨季1年間ほぼ試合に出続けてゴールデングラブ賞も獲得できたことで、今までやってきた練習が間違いでなかったこと、よりレベルを上げるには基礎が大事だと再確認できたのでしょう。もともと根はすごく真面目な努力家。そこに自信が加わり、成長のスピードが加速しているように感じます。守備力を重視する岡田監督のもと、遊撃手としてさらに進化する可能性が高そうです。

投手目線で見れば、木浪選手は非常に安心感のある遊撃手。そこまで派手に見せなくても、アウトにしてほしい打球を確実にアウトにしてくれる。かつての鳥谷さんのような信頼感がある選手です。遊撃には強肩の小幡選手も控えており、岡田監督はまだ木浪選手のレギュラーを確約していません。とはいえ、キャンプ序盤からの守備に懸ける意識の高さを見る限り、今年も遊撃本命は木浪選手で間違いないでしょう。(日刊スポーツ評論家)