プロ入り4年目を迎える阪神の佐藤輝明から、いよいよ“本格化”しそうな気配が漂ってきた。今キャンプ2試合目の紅白戦で1本塁打を含む2打数2安打。別にこの時期の実戦で結果が出たから言っているわけではない。昨オフに渡米し、ドライブラインで打撃フォームを改良したと聞いていたが、明らかにその成果が出ていると感じる内容だった。

白組の「1番・三塁」で出場し、第1打席に右翼への本塁打。投手は秋山でフルカウントからの甘い真っすぐだった。本塁打そのものは、これまでのスイングでも仕留められた1発だと言ってもいいだろう。しかし、ひと味違った打撃を見せたのは、第2打席だった。2番手で登板した加治屋の内角のカットボールを、やや詰まりながらもレフトとセンターの間に押し込むようなフライでヒットにした。

これまでのスイング軌道なら、こすったような当たりでのショートフライか、強引に振りにいってセカンドゴロだっただろう。カウントは1-2で追い込まれていながら、変化球もマークしながらのスイング。内角といっても、それほど厳しいコースではなかったが、今まで対応できなかったコースだった。

佐藤輝のスイング軌道は、“V軌道”だった。簡単に説明するなら、高い位置にグリップを構え、上からバットを出し、最下点を通過してからアッパー軌道でインパクトしていた。このタイプの長距離砲は多いが、弱点はインパクトゾーンが短いところ。ドンピシャのタイミングで合えばいいのだが、少しでもズレるともろさが出る。長打が出ても、打率は残りにくいスイング軌道だった。

今年のスイングは違った。捕手側にヘッドを早めに落としてから打ちにいけている。だから“V”のような鋭角の底辺ではなく“U”の底辺のような軌道で、インパクトゾーンを長くできている。これだと多少、差し込まれても押し込んでいけるし、少しタイミングが早くてもその後のスイング軌道がブレにくい。懐が深い打撃が可能になる。

右投げ左打ちは、利き手が前にあるため、どうしてもトップの形をしっかり作ってから打ちにいくのが難しい。佐藤輝もまだ、トップの形が不安定なものの、これぐらいインパクトゾーンの幅が広がれば不調の期間は短くできると思う。メジャー仕込みの迫力満点のバッティングを期待したい。(日刊スポーツ評論家)

阪神春季キャンプ紅白戦 1回裏白組無死、佐藤輝明は右越えに本塁打を放つ(撮影・藤尾明華)
阪神春季キャンプ紅白戦 1回裏白組無死、佐藤輝明は右越えに本塁打を放つ(撮影・藤尾明華)
紅白戦 1回裏白組無死、佐藤輝は右越えソロ本塁打を放つ(撮影・加藤哉)
紅白戦 1回裏白組無死、佐藤輝は右越えソロ本塁打を放つ(撮影・加藤哉)
阪神春季キャンプ紅白戦 3回裏白組無死、佐藤輝はヘルメットを飛ばし、中前打を放つ(撮影・藤尾明華)
阪神春季キャンプ紅白戦 3回裏白組無死、佐藤輝はヘルメットを飛ばし、中前打を放つ(撮影・藤尾明華)