日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(40)が古巣阪神の現状をチェックし、外野両翼争いの渦中にいる前川右京外野手(20)に走塁力の向上を求めた。9回に中日守護神マルティネスから右前適時打を放つなど2安打を記録したが、試合序盤には二塁走者として右前適時打で三塁ストップする場面も。レギュラーを取れる潜在能力を認めるからこそ「走塁面でもスキを減らしてほしい」と力説した。【聞き手=佐井陽介】

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オープン戦とはいえ、阪神も徐々に本番モードに入りつつある時期。だからこそ前川選手の走塁が気になりました。同点で迎えた3回1死一、二塁。5番ノイジー選手が右前にハーフライナーを落とした際、二塁走者として三塁に止まった場面です。右翼の鵜飼選手は深めのポジションを取っていました。間一髪のショートバウンドキャッチをしたわけでもありません。事前にポジションを確認した上で正確に打球を判断できていれば、確実にホームインしていたはずです。

前川選手は今、左翼と右翼を懸命に争っている立場。オープン戦も残り試合が少なくなってきた中、生き残りに必死だと思います。この日は昨季日本一メンバーの中で3番スタメンのチャンスをもらって、気合が空回りしてしまったのかもしれません。とはいえ、あの打球は昨季のレギュラーメンバーであれば、難なく三塁ベースを蹴っていたであろう当たり。ただでさえ阪神はスキのない走塁に定評のあるチームなので、余計に前川選手の走塁が目立ってしまった形です。

もちろん、打撃の潜在能力は誰もが認めるところです。9回に中日の絶対的守護神マルティネスからしぶとく右前適時打を決めるなど2安打。ただ、走塁面で信頼を得られなければ、たとえ先発出場できた試合でも代走を送られる可能性は高くなってしまいます。まだ高卒3年目の20歳。走攻守に完璧を求めるのは酷ですが、前年度日本一のチームで本気にレギュラーを取りにいくのであれば、走塁面でもスキを減らしてほしいところです。

打線全体としては途中出場の植田選手、高寺選手が9回、数少ない打席の中でマルティネスから2者連続安打を放ったシーンは見事でした。これは日々の準備のたまものに違いありません。阪神は昨季防御率0・39のマルティネスから前日15日に2安打、この日も3安打を浴びせています。オープン戦とはいえ、苦手意識を地道に少なくしていく作業はシーズンに生きてくると感じます。(日刊スポーツ評論家)

中日対阪神 9回表阪神1死一、二塁、右前適時打を放つ前川(撮影・森本幸一)
中日対阪神 9回表阪神1死一、二塁、右前適時打を放つ前川(撮影・森本幸一)