阪神はなぜ「アレンパ」を逃したのか-。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(43)が1日、古巣がV逸した要因をライバル球団と比較しながら分析した。一足早く今季を振り返った上で、2年連続日本一に向けた他球団にはないストロングポイントも強調した。【聞き手=佐井陽介】
まれに見る混戦となったセ・リーグ優勝争いに決着がつきました。阪神はなぜ連覇を逃してしまったのでしょうか? 個人的には「上積みの差」が要因となったように感じます。
阪神はここ数年、生え抜き選手を中心としたチーム作りを進めています。昨季は18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一を達成。オフは支配下の新外国人獲得をゲラ投手の1人だけにとどめ、シーズン途中の助っ人補強もなし。現有戦力の伸びしろを信じました。
ただ、現実を見れば、昨季から大きく成績を伸ばした野手は森下選手ぐらい。多くは昨季と同等かそれ以下の成績に終わりそうです。先発陣では才木投手やビーズリー投手が飛躍した分、青柳投手や伊藤将投手に誤算が生じました。
全体的な戦力が大幅にダウンしたとは思いません。特に投手陣は層が厚く、誰かが不調に陥れば誰かがカバーできる体制が整っていました。野手陣にしても、2番中野選手は数字だけを見れば成績を落としましたが、中野選手が犠打でつなぐ流れにシフトチェンジしてからは得点力をアップさせています。とはいえ、大幅な上積みに成功したとは残念ながら言えません。
一方、ライバル球団、特に巨人とDeNAには強烈なプラスアルファとなる選手が現れました。巨人は昨季4勝8敗だった菅野投手が現時点で15勝3敗。単純計算で昨季から16個も貯金を増やしました。23歳左腕・井上投手の先発ローテ定着も効果的でした。新助っ人の目玉となるはずだったオドーア選手が開幕前に退団したのに、シーズン途中加入のヘルナンデス選手、モンテス選手が救世主となったのも大きかったですね。
DeNAはなんといってもオースティン選手です。昨季打率2割7分7厘、0本塁打、6打点だった選手が今季は打率3割1分1厘、24本塁打、68打点。たった1人で戦力図を一変させました。今永投手、バウアー投手が抜けたダメージも、エース東投手の奮闘と新加入ジャクソン投手らの踏ん張りで小さくとどめた形。梶原選手のブレークも含め、昨季から上積みがあったと言えるでしょう。
巨人に関しては、就任1年目の阿部監督の「捕手目線」にも注目したいですね。投手の代え時やイニングまたぎなど、捕手出身者ならではの経験値が采配の中で存分に発揮されていました。さらに要所要所でのベテランの使い方も巧みでした。丸選手を途中から1番で使い続け、不振に苦しんだ坂本選手にも不変の信頼感を起用や言葉で伝え続け…。ベテランを生かし続けた手腕も上積みの1つとなったように感じます。
このようにライバルが懸命にプラスアルファを作る中、阪神は「上積み勝負」に敗れてしまった側面は否めません。ただでさえ、前年度王者として徹底マークされて迎えたシーズン。2点差を追いつきながら拙攻とミスで落とした9月27日広島戦のように、昨季であれば勝てていた展開で勝ちきれない試合も目立ちました。打倒阪神で来る相手をはね返すだけの上積みがなかった印象です。
とはいえ、9月の猛追には昨季日本一チームの底力を見ました。地力勝負となるポストシーズンを勝ち上がる可能性はまだ十分あります。阪神には他チームであれば主戦格の先発投手が6、7人はいます。CSファーストステージから勝ち上がった場合も、ファイナルステージで投手の枚数に悩むことはありません。勢いに乗ってしまえば、球団史上初の2年連続日本一も全く夢物語ではありません。(日刊スポーツ評論家)
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