お互いに負けられない試合の中で、見応えのある勝負があった。巨人・浦田とヤクルト・岩田の盗塁王争いだが、今試合では1度ずつ盗塁を試みてアウトになった。「絶対に走る」という2人の意気込みと「絶対にアウトにする」という守る側の執念の対決だった。
最初に走ったのは、岩田だった。0-0で迎えた2回1死一塁、8番打者の武岡の3球目、岩田が勝負をかけてアウトになった。
ここで見事に盗塁アウトをアシストしたのが、二塁ベースに入ってタッチした泉口のプレーだった。大城の送球はワンバンで、普通に捕球しようとすると弾んだボールの軌道に合わせるため、グラブは下から上に動きやすく、キャッチした瞬間にグラブが止まってしまうことも多い。しかし泉口は浮き上がりそうなグラブを我慢させ、上から下に動きを止めることなく落とすようにタッチしていた。
タイミングは微妙で1度はセーフになったが、リクエストの結果はアウト。もし泉口のタッチが一瞬でも遅れていたら間違いなくセーフだっただろう。
岩田も勝負をかけていた。巨人のハワードのクイックは真っすぐだと1秒20を切る。足の速い走者でも普通にスタートを切っただけではアウトになる。状況的には盗塁を失敗すれば投手の打席まで回らなくなる。アウトにはなれない状況だった。そこで仕掛けたのは2ストライク。本来、クイックでボールゾーンに投げやすいカウントだが、バッテリーの裏をかいて仕掛けたのだろう。大城の送球がワンバンになったのも、岩田が意表を突いたカウントで走ったからだと思う。
一方の浦田が盗塁を仕掛けたのは、6回2死一塁の初球だった。ここはアウトになってもいいから盗塁を仕掛けていい場面。それでも盗塁を狙うのはみえみえで、意外と走りにくい。特に奥川のクイックはハワードほど速くはないが、1秒20台の前半で速い。まだけん制球を1球も投げていない状況だった。もしかすると、初球はけん制球を投げないというデータがあるか、けん制球の癖があるのかもしれない。それでも走りにくい状況でスタートを切った。
ここで盗塁アウトをアシストしたのが、捕手の古賀のプレーだった。外角には構えていたが、ウエストの動きを見せたのはピッチャーが投げ始めたあとだった。これだと走者はウエストする動きが見えない。みえみえの盗塁をしていい状況の中で、浦田は意表を突いたが、古賀はわずかな隙も見せなかった。この時の奥川のクイックは1秒21で、古賀の送球はストライク。それでもタイミングはギリギリでアウト。ここでもリクエストがあって判定は覆らなかったが、見応えがある攻防だった。
アウトにはなったが、岩田も浦田も「さすが」というスピードだった。そしてアウトをアシストした泉口、古賀のプレーも「これぞプロ」というレベルだった。(日刊スポーツ評論家)




