2年ぶりの日本一。シーズン94勝。ソフトバンクは圧倒的な強さだった。苦しいはずの夏場過ぎ。エンジンを吹かして一気に首位に立つと、CSファイナルステージも3位楽天を倒し、シリーズではDeNAを蹴散らした。

 選手たちのポテンシャルの高さを痛感する1年であった。かつて福岡には「野武士軍団」と呼ばれたチームがあった。魔術師・三原監督が率いた西鉄ライオンズ。ホークスは宿敵であったが、今はその宿敵が、ノスタルジーをしのぐほどの強いチームとなった。V逸した昨年も強かった。2000年代になって、そろそろ20年になるが、ホークスはずっと強い。Bクラスは2度しかない。福岡移転後、初優勝が99年。シーズン11年目にして悲願の優勝だった。「リーグは6チームしかないでしょ。6年に1回は優勝しないとおかしいでしょ。だいたいウチは弱すぎますわな」。ダイエーの初代オーナーだった故中内功氏は、低迷するチームをそう言って揶揄(やゆ)していたのが懐かしい。

 常勝となった今、目線を上げていくことも大事だが、足もともしっかりと見つめてほしい。選手のポテンシャルは安定的なものではない。高いレベルを維持し続けるには、しっかりとしたビジョンと教育環境が必要だ。かつて金満球団と呼ばれたチームは今、再建に向け、いばらの道を歩いている。

 球団創設と時を同じくして、本社ソフトバンクはCIを導入した。ホークス選手が着るユニホームの袖にはホーム、ビジター用も2本線が入っている。ソフトバンクのコーポレートマークであり、その元は孫オーナーが尊敬する坂本龍馬が率いた海援隊の隊旗に由来する。坂本龍馬の言葉にこんなフレーズがあった。幕末期、犬猿の仲とされた薩摩藩と長州藩の手を結ばせた「薩長同盟」の時、龍馬は言ったという。「物事がなるというのは、それを提示した者の魅力ということが大きい」-。

 魅力的な球団になってもらいたい。ファンの視線は勝敗だけではないと思う。本当の意味で愛される球団になるための、大きなターニングポイントとなる日本一ではないかと思っている。【ソフトバンク担当 佐竹英治】