右ストレートのシャドーをしながら「殴るとき、肘入れなきゃってと思わないでしょ?」と言う。少々野蛮な理論を用いて、広島鈴木が新しい打撃のイメージを明かしてくれた。右足骨折からのリハビリ期間で膨らませた、ひとつの感覚。最初は「秘密です」の一点張りも、しつこく聞くと固い口を開いた。

 長いリハビリ期間。動画で何人もの好打者の映像を見た。2画面にセットし、外国人と日本人、自身の打撃と見比べる。「外国人はシンプルなんです」。構えたバットがシンプルにボールにコンタクトする。一方、パワーがないと言われる日本人は力を最大限に伝えるため「小さい頃からあれこれと言われがちなんですよね」と続ける。行き着いたのがボクシング理論だ。

 確かに「バットは最短距離」や「右脇を締めろ」、「体と腕の三角形を崩すな」という指導は多い。あれこれ考えるうちに、重要なことが忘れられる。「バットは真っすぐ出せばいい。自然と右肘は入るし、三角形になる」。大事なのは目的だ。ケガからの発想の転換が、鈴木にまたひとつ引き出しをもたらした。と言うか、どこまで野球小僧なんですか。【広島担当=池本泰尚】