楽天5年目右腕の古川侑利投手(22)にとって、救助ならお手の物だ。佐賀・武雄北中学2年の時だった。古川少年は、母ゆかりさんと車に乗車中だった。自宅近くの踏切に差しかかると、踏切内で座り込んでいた女性が目に入った。驚く暇もなく、すぐさま車の外に出て、母と2人で協力してその女性を引きずり、踏切の外に出した。

 発見から救護までの一連の迅速な行動は地元でも、大きな話題を呼んだ。武雄警察署長の吉永正警視から感謝状を贈られるとともに、佐賀県教育委員会の川崎俊広教育長から表彰状を受け取った。古川は当時のことを「覚えていますよ。とにかく必死でしたね。がむしゃらだった気がします。早く助けないといけないって話して。とにかくびっくりしましたけど」と振り返る。

 心優しき一面を持つ一方で、幼少期から豪快さを兼ね備えていた。家族だんらんで、すき焼きを囲んでいた際、両親が目を離した隙に生卵3個を飲み干した。3歳でだ。父雄一さんは「もうびっくりですよ。えーって言った時には遅かったけど、笑いながら『ごくごく』って飲んでいましたから。本当にあぜんとしましたね」と目を丸くしたというが、本人は「好きだったんですよね。よく飲んでいた記憶あります」と笑ってみせた。

 保育園の卒園式では「ホームランバッターになりたい」と語り、かつては巨人ファンとして、ゴジラ松井に憧れを抱いていた古川少年。3歳から小学校3年まで水泳を習い、基礎体力を養い、小学校から中学まで習った8段の腕前の書道で、心を整えてきた。親戚には競輪選手がいるが、2歳からボール遊びを始めた野球でついにプロとしての第1歩を踏み出した。「やっとプロ野球選手になった気がします」。レスキュー古川“隊員”が、チームの連敗を止めてみせた。【栗田尚樹】

楽天古川は中学生時代に母ゆかりさんと地元の佐賀・武雄市で踏切内にいる女性を救助した際に、武雄警察から感謝状を受け取る
楽天古川は中学生時代に母ゆかりさんと地元の佐賀・武雄市で踏切内にいる女性を救助した際に、武雄警察から感謝状を受け取る