元DeNA投手の安斉さん(右)と巨人村田2軍打撃コーチ(撮影・金子真仁)
元DeNA投手の安斉さん(右)と巨人村田2軍打撃コーチ(撮影・金子真仁)

師走に入った2日、神奈川・座間市民球場がざわついた。中学生の野球教室で、巨人村田修一2軍打撃コーチ(37)に杉内俊哉2軍投手コーチ(38)日本ハム実松一成捕手(37)ら有名人が次々現れた。球場内外に「すごいメンバーだ」「なんで呼べたの?」の声が広がった。

仕掛け人は同市体育館勤務の安斉雄虎氏(たけとら=27)。筒香と同期の元DeNA投手だ。故障に泣かされた現役時代、村田氏との接点はわずか2年。それでも「まっすぐで後輩思い。あこがれのスターでした」と、今秋の栃木での引退試合も観戦。「ぜひ村田さんに野球教室を」と願い、頼み込んだ。

“虎のひと声”に、男・村田が応える。「タケトラは一緒のチームだったし、セカンドキャリアで頑張る後輩には協力したい」と、即座に同世代の豪華講師陣をそろえた。大先輩の快諾に身を震わせながら、そこからが安斉氏の多忙な日々。イベント運営の経験はなく、マニュアルもない。「何から何まで、ほとんど1人で作りました」。

スケジュール決め、講師や中学校との折衝、会場手配、すべきことは多い。地元で人気の弁当店は、野球教室当日が定休日だった。「何とかお願いできませんか」と頭を下げ、講師の食事も準備した。「育ててくれた地元に恩返しをしたいんです」。村田氏が安斉氏の力になったように、安斉氏も座間の後輩に夢を届けたかった。

思いがつながった野球教室は大盛況で、予定より1時間近く延長した。午後2時、控室に弁当が用意された。「せっかくだから食べて行こうかな」と講師全員が平らげてくれた。深々と頭を下げて見送り、片付けをし、安斉氏が昼食をとったのは午後4時。充実の笑顔で「ふうっ」とひと息ついた。【金子真仁】

挟殺プレーで必死に中学生を追う巨人村田2軍打撃コーチ(撮影・金子真仁)
挟殺プレーで必死に中学生を追う巨人村田2軍打撃コーチ(撮影・金子真仁)