今季新人王を獲得したDeNA東克樹投手が、少しだけ不思議そうにしていた。

巨人菅野と投げ合った後のことだ。「マウンドの踏み込む足の幅が同じだったんですよね」。9月28日、激しい3位争いを演じる両チームの直接対決は、投手戦だった。球界のエース・菅野に胸を借りる形で先発した。身長差は186センチの菅野に対し170センチ。当然、足の長さも違うわけだが、幅が同じだったことに少し違和感があったようだ。

この話を聞いて、相手選手の「足跡」を見ているという視点が印象的だった。7回まで余裕を漂わせる菅野に対し、必死に食らいつきながら無失点で投げ合う投手戦。無我夢中だったのかと思ったら、意外と冷静に投げていたようだ。東京ドームという敵地で、普段は投げないマウンドだから、余計に気づきがあったのかもしれない。

マウンドだけではない。以前、柴田竜拓内野手がマツダスタジアムでの試合翌日に言っていたことがあった。セカンドで先発したときのこと、広島菊池涼介の「足跡」は自分の守備位置よりも数メートル後方にあったという。「全然違う場所に菊池さんの足跡があるからびっくりしました。それだけ守備範囲が広いということなんだと思います」。人工芝の横浜ではなく、赤土のマツダで相手に名手・菊池涼介がいたから気づけた。

ただ、土のグラウンドで相手にいわゆる名選手がいただけでは、きっと分からない。その足跡に気づく感性を持ち、なによりうまくなりたいという意欲がなければ、その存在はなかったことになってしまう。オフシーズンの自主トレは、シーズン中のそんなこと思い出しながら練習に励む時間なのだろう。成長へのヒントは、グラウンドに隠れている。【DeNA担当 栗田成芳】