リニューアルし1面化された甲子園の大型ビジョン(2019年3月4日撮影)
リニューアルし1面化された甲子園の大型ビジョン(2019年3月4日撮影)

先日、阪神の球団首脳から興味深い話を聞いた。いまはデータ野球全盛だ。たわいもない雑談で思い出したのか、こう明かす。「藤川投手って、昨年、球の回転数が球界でトップクラスだったんですよ」。スピードガンに表れない球の質がある。38歳にして救援の第一線で活躍できる秘密だ。

トラックマンが測ったデータだった。3月上旬、福岡遠征のソフトバンク戦は浜地が先発。松田宣から空振り三振を奪った打席でテレビ中継は速球を「2274rpm」と表示した。1分間に換算した球の回転数を指し、球のキレを高評価される20歳は大リーグの平均値とほぼ同じだ。藤川はこれを、だいぶ上回るスピン数をはじき出していた。

余談が長くなったが、甲子園の新装成った1面化ビジョンの話である。実は工事中、球団関係者が「トラックマンのデータも可能な範囲で使えればいい」と話していたので、ちょっと期待したが、現時点で採用されていない。担当者は「ゆくゆくは、そういうのもできればいい。どうデータ演出するか、シーズン中もいろいろ参考にしながら、次につなげたい」と話した。

戦う現場が参考にするデータである。公にできない数値もあるし、場内演出との調整は必要だが、目の肥えた野球ファンをうならせるコンテンツになる。藤川のスピン数のように球趣をそそる。きっと、近未来の観戦の光景になるだろう。

さて、甲子園のビジョンで球団史上初めて採用した試みがある。ヒッティングマーチの歌詞紹介である。「内野側のお客様にも歌ってもらいたい。以前から歌詞が分からないという声もありました」と担当者。アナログも、デジタルも欲張っていい。人もモノも、変われなければ飽きられる。【阪神担当 酒井俊作】

ファンのジェット風船で黄色に染まったスタンドを背に投球する藤川球児
ファンのジェット風船で黄色に染まったスタンドを背に投球する藤川球児