<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク3-0阪神>◇13日◇ヤフオクドーム

阪神との交流戦3連戦はシリーズ並みの人出だった。ヤフオクドームのお客さんではなく、報道陣の数だ。初戦から日刊スポーツでも評論家を含めると現場デスクに編集委員、虎番記者…総勢8人の取材態勢。日本シリーズでもクライマックス・シリーズでもあるまいに、各社同じような陣容で乗り込んで来る。昔は巨人担当が一番多かったように思うが、もうその比ではない。

そんな中、一塁側ベンチ前に懐かしい顔があった。ホークスから日本ハム、そして阪神に移籍し、左腕エースとして活躍した下柳剛氏だ。ラジオ解説でやって来た。通算129勝を挙げ、阪神在籍時には最多勝を含め5度の2ケタ勝利をマークするなど大活躍したサウスポーだ。プロの原点はこのヤフオクドーム(福岡ドーム)だった。

「あんなの球界でも誰もいませんよ」。下柳氏は豪快に笑って昔を回想した。ダイエー時代の94年。ある試合で中継ぎで登板していたときのこと。5回終了時に球場内に翌日の予告先発のアナウンスが流れるのだが、ベンチに引き揚げる下柳の背中に響き渡ったのは「明日の先発は下柳」-のウグイス嬢の声だった。

制球難克服のために、投げて投げて投げまくった。試合前には打撃投手を務め、外野でもベースを持っていってまた投球練習。さらにブルペンで投げ込んで、試合で登板。驚くことに降板後もブルペンで投げ込み…。「だいたい毎日300球くらい投げていましたね」と、笑い飛ばした。

この日はソフトバンク大竹、阪神高橋遥の好投で緊迫した投手戦となったが、グラシアルの1発で勝負は決まった。

「(投手は)投げないとうまくなりませんよ。習字と一緒。いっぱい書かないとうまくならないでしょ。かっこつけて字を書いても基本がなってないとダメでしょ。投球もそれと同じ」。

何でも効率化が叫ばれる中、下柳氏の言葉には妙に納得させられた。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

阪神打線を相手に力投する大竹(撮影・栗木一考)
阪神打線を相手に力投する大竹(撮影・栗木一考)