「皆さんっ! 台湾の焼き肉屋を覚えていますか!?」

日付が変わり、11月18日午前0時10分過ぎ。皆がシャンパンファイトに酔いしれた最後、締めの言葉を任されたのは会沢翼捕手だった。この絶叫を合図に、侍戦士たちは一斉に円を作り、手をつなぎ、万歳三唱で「プレミア12」制覇を締めくくった。

ちなみに乾杯のあいさつは野手最年長でチームを盛り上げ続けた“熱男”こと松田。ではなぜ、締めの男に会沢が選ばれたのだろうか。同い年にはチームリーダー格の坂本勇がいた。1学年下にも中心選手の菊池涼がいた。ちょっと気になったので後日、本人に質問してみた。

聞けば、当初はやはり坂本勇が締める予定だったらしい。だが、シャンパンファイトの終盤、坂本勇を中心に「アツさん(会沢の愛称)、やってよ!」とけしかけられた末の人選だったという。「最初はヤダって言ったんですけどね。最後は『じゃあ、やらせていただきます』ということで」。会沢は少し照れくさそうに振り返ってくれた。

伏線は決起集会にあった。1次ラウンド開催地の台湾に入った翌日11月3日、侍ジャパンはある焼き肉屋で食事会を催した。不動の1番打者となるはずだった秋山が負傷離脱して間もないタイミング。今まで以上にチームを一丸にさせるべく、会沢はどうやら奮闘したらしい。会の終盤、自ら音頭を取り、仲間全員で手をつないでもらうことで、一体感を作り出そうとしたのだという。この一件があったから、シャンパンファイトの最後にお鉢が回って来たのだろう。

「その時は、僕自身も酔っぱらってしまっていたんでね…。カープでも何回か(手をつなぐ儀式を)やったことがあったので、いいかなと思って」

主要大会では09年WBC以来10年ぶりとなった侍ジャパン世界一。その舞台裏では「手と手のぬくもり」が絆を深めていた。【遊軍=佐井陽介】