亡き父を思い、打席へ向かう。ソフトバンクからFA移籍したロッテ福田秀平外野手(31)が、本拠地ZOZOマリンでの今季登場曲を「歌にするから」に決めた。

プロ入り2年目の08年に他界した父徹さん(享年59)への思いを、ポップロックバンド「wacci(ワッチ)」のボーカル橋口洋平(36)が歌にした。16日には橋口がMCを務めるFMヨコハマの番組にも生出演し、思いを語った。

福田秀は、気持ちを高めるための打席登場曲を「かなり大事だと思います」と捉えている。勝負のロッテ1年目、選んだのは自分自身の物語だ。例えば「あなたの言葉で湧いてきた勇気がある」という詞がある。「初めて聞いた時、真っ先にお父さんの顔が浮かびました」。

大きな背中の隣で泣いた日が懐かしい。多摩大聖ケ丘高1年の、夏前のこと。野球部の練習がつらく、やめようと思った。父から江の島ドライブに誘われ、学校をずる休み。一日中、たくさん話した。「野球、もうちょっと頑張ってみないか?」。優しさに涙し、再び立ち上がった15歳での出来事がなければ、名選手はここにはいない。

病に倒れた父は、息子が成人する直前に帰らぬ人になった。「すごくつらかったです。当時は気力も出なかった。鳥越さんや先輩方がたくさん励ましてくださって」。その鳥越ヘッドコーチもいる新天地に導かれ、あらためて振り返る。「ぼくの人生、節目節目で支えられてきました」と。

支えてくれた人たちの期待を背負いながら、ピンストライプのユニホームで駆け回るシーズンが待ち遠しい。本来なら開幕前日だった19日は、古巣福岡で汗を流した。「新たなる挑戦です。キャリアの中で、今まで一番いい年にしたいですね」。海風に乗って届く父の歌が、長い1年の支えになる。【金子真仁】

打撃練習をする福田秀(撮影・栗木一考)
打撃練習をする福田秀(撮影・栗木一考)
打撃練習をするロッテ福田秀(撮影・栗木一考)
打撃練習をするロッテ福田秀(撮影・栗木一考)