ソフトバンクの宮崎春季キャンプは朝日がまぶしい午前8時すぎに、選手らがタクシーで球場入りする。通常メニュー前に「アーリーワーク」として、指名されて朝の「課外授業」を受ける選手たちだ。
やがて室内練習場でアップが始まるが、その横で、もうマシン打撃で大汗をかいている選手がいた。今年38歳になるベテラン川島だ。昨年限りで現役を引退した西田球団広報は「球場に来るのは、だいたい(川島)慶三さんが1番ですかね」と教えてくれた。若手選手が多いアーリーワークより先に練習を始めている。今年37歳になる長谷川が、指名されずとも汗を流す姿を見たこともあった。
ソフトバンクとはそういう球団なのだ。誰もスキを見せない。だから強い。
宮崎アイビースタジアムでは、ほどなくアーリーワークが始まった。今季から加入した小久保ヘッドコーチが、若手野手相手に打撃投手を務めている。今から27年前。高知キャンプでルーキーだった小久保を追いかけて取材したことを思い出す。高知城見学や球場からホテルまで約30分ほどの道のりで歩きながら話を聞いた。侍ジャパンの監督も経験し古巣に戻ってきた。
小久保ヘッドの後、打撃投手に登板したのは、城島球団会長付特別アドバイザーだ。フロントとして、選手のアドバイザーとして、欠かせない存在となっている。今から27年前の秋、ドラフトでダイエーに1位指名された時、別府大付(現明豊)3年だった城島を取材した。指名翌日、長崎・佐世保の実家で「家族会議」をするため、急きょ学校のある別府から佐世保に移動することが判明。特急の中で原稿を書きながら半日で「九州横断」をした。当時はまだ新聞社でも少なかった携帯電話を使い、原稿を送信したのも思い出す。今は普通だが当時は画期的だった。
打撃ケージ横では、王球団会長が温かい目で孫のような選手の打撃を見守っている。初対面は94年夏。福岡県内のゴルフ場でダイエー監督就任について直撃取材した時だ。記者4年目の私でも、快く取材に応じてくれた。「申し訳ないけど今は何も言えないよ」。あの笑顔は今でも忘れない。
9日から17日まで、ソフトバンクキャンプを取材した。アーリーワークをスタンドから眺めていると、長い年月が過ぎたことを痛感する。顔にしわが増え、頭頂部も寂しくなった。
今年7月で55歳になる。川島のように心は燃えているか。自分にそう問いかけてみた。【ソフトバンク担当=浦田由紀夫】




