強く印象に残る場面に遭遇した。9月13日の中日-ヤクルト18回戦(バンテリンドーム)。9回表、ヤクルト攻撃時の不可解な判定による決着と、高津臣吾監督(52)の15分間の猛抗議と言えば、すぐに思い出す人も多いだろう。近年はリクエスト制度によるビデオ判定の導入など、審判の在り方も変わってきているが、さらに踏み込んで、より多くの人が納得できるルール整備や柔軟な対応が必要になってくると感じた。
状況をあらためて説明すると、1点を追う9回1死一、二塁で代打川端は二塁へのゴロ。二塁堂上が一走西浦をタッチにいくがタッチできず、一塁送球したが川端はセーフ。ここで西浦が一、二塁間で挟まれたが、中日側は二塁に送球して遊撃京田がベースを踏んだ。本来はここでフォースアウト成立となるが二塁塁審のジャッジはなく、この間に三塁まで進んでいた二走古賀が、本塁を狙って突っ込みアウトになった。その後、中日側のリクエストで二塁フォースアウトが認められてゲームセット。ヤクルト側からすれば最初の二塁フォースアウト時に、審判から明確なアウトのジャッジがあれば、古賀が危険を冒して本塁に突っ込む必要はなかったという主張だ。
バックネット裏の記者席から見ていた報道陣でも当惑する状況だっただけに、実際にプレーしていた選手、審判の混乱は相当なものだったろう。確かにビデオを確認すると、京田はしっかりと強調するようにベースを踏んでいるが、この時点での判定はない。京田も不思議に思っただろうが、判定がない以上はプレーを続け、走者西浦を挟殺にいったことは自然の流れだっただろう。
一方でヤクルト側から見れば、二走古賀が打者走者川端の一塁のアウトセーフを確認していたかは分からないが、西浦が二塁でフォースアウトを宣告されず、一、二塁間で挟まれている状況を見て「西浦がアウトになればゲームセットになる。それなら本塁にいかないと」と捉え、本塁を狙いにいったと考えられる。
試合終了後に取材に対応した責任審判の丹波主審によると「(二塁で)ジャッジしていなかったら、プレーが動くのは絶対なので」。これもまた正当な言い分ではある。
だが後日、NPBの友寄審判部長らが神宮球場を訪れて謝罪したところによると、判定が混乱した原因は「(二塁塁審の嶋田塁審が)バッターランナーが一塁でアウトになったという思い込みが要因」という。もちろん審判も人間である以上は勘違い、見落としもあるが、これだけ多くの映像が残り、現地のファンや、テレビ視聴者、他の審判も見ている状況。さらにはSNSにもすぐに動画が拡散され、判定が話題になる。審判にとっては、厳しい時代だろう。
今回のようなケースでビデオリプレーを行うのなら「臨機応変に妥協点を見つければいいのに」と素直に思う。特に「試合が成立する状況の判定」については、必要に応じて審判団が協議し“正確なジャッジが行われた場合に想定される状況”に場面を戻して、プレー再開とはいかないものかと思う(このケースなら、2死一、三塁で再開が妥当か)。あくまで現状のルールがあり、今回はすべて「一連のプレー」の中での出来事で、どの場面で切り取るかなどで問題はあると思うが、より多くの人が納得できる状況にはなるかもしれない。
柔道でも、レスリングでも、サッカーでも、もちろん野球でも。ビデオ判定は近年までなかったルール。時代に応じて、納得のいく運用方法を探っていく必要があるだろう。【遊軍=鈴木正章】




