その落ち着きに驚いた。広島ドラフト3位中村健人外野手(24=トヨタ自動車)のことだ。1月初旬に入寮し、広島・廿日市市内の大野練習場で新人合同自主トレを行ってきた。1軍選手と顔を合わせるのは2月のキャンプからだ。右も左も分からないはずのプロ野球キャンプ。それも1軍。だが中村健に緊張や恐縮といった表情は見られなかった。

「菊池(涼)さんや、会沢さんがそばにいらっしゃることにハッとすることもあるが、長いスパンで活躍されてる先輩のどこにその秘訣(ひけつ)があるのかなと思うと毎日が楽しい」

新しい環境を満喫しているようにさえ映った。

第1クールが終わった後には「いい緊張感でやれている。レベルアップに集中できる」。第2クール終了後には「体も緊張もほぐれてきた。今日はここ使ったな、ここ張りそうだなと思うと、やっぱり(翌日は)疲れている」。冷静な分析は不安や心配などマイナスの感情とは遠いところに立っている証しだろう。

第2クールに行われたシート打撃では2日続けて複数安打を放つなど、結果も出した。10日からは第3クールが始まる。「求められている部分をアピールするのはもちろんだが、(今年で)25歳だけど1年目なので声を出すとか、フレッシュさも出したい。自分らしさと一緒にいい結果を出せたら」。中京大中京、慶大、トヨタ自動車でプレー。豊富な経験から生まれる中村健の“落ち着き”。ポスト鈴木誠也と言われるプレッシャーさえも冷静にはね返し、周囲の期待に応えるはずだ。ルーキーとしてではなく、1人のプロ野球選手として今後の中村健を取材したい。【広島担当 前山慎治】