中日の借金が14に膨らみ、長いトンネルから抜け出せない。そんな古巣の姿に心を痛める人がいる。名古屋市北区上飯田にある居酒屋「旨たつ家」の大将を務める清水治美さん(61)だ。

15年、中日打撃投手時代の清水治美さん
15年、中日打撃投手時代の清水治美さん

83年に日本通運からドラフト6位で入団した左腕投手だった。現役生活は2年。引退後は打撃投手として中日野手陣のサポート役に徹して、21年オフを最後に30年近く過ごした中日を去り、昨年11月から「旨たつ家」の大将として切り盛りしている。店には中日のOB、関係者だけでなく、現役選手も顔出すという。バンテリンドームでのホームゲームを応援にきた関東地区の応援団が試合観戦後に席を埋めることもある。中日が勝った営業日には、お客さんへトマトジュースをプレゼントしているが、「たくさん仕入れたけど、全然減らない」と中日の苦戦に苦笑いする。

声援に応える福永裕基
声援に応える福永裕基

その清水さんが今年の打線で注目するのが、ドラフト7位福永裕基内野手(26)。34試合に出場し、120打数37安打、1本塁打、7打点、打率3割8厘(21日現在)で、打線の中軸を担っている。ヒットのうち、中堅から右翼方向への打球は21。逆方向の右打ちを得意としている。「彼はインコースの球を捉えて右方向へ安打を打てる。あれは天性のものだね」。現役時代の立浪監督、パウエルや大豊、山崎、福留、和田打撃コーチや荒木内野守備走塁コーチ、大島ら数多くの打撃タイトルホルダーに投げてきた経験値が、ルーキーに最上の評価を与える。

高卒新人時代から打撃投手として、立浪監督は岡林、石川昂、村松ら若い選手を前面に出し、難局に臨んでいる。球団OBらの直筆サインで埋まる店の壁面を背に、後輩が指揮を執る戦いを見守っている。【中日担当=伊東大介】

ベンチで厳しい表情の立浪和義監督(左)と和田一浩コーチ(2023年5月18日撮影)
ベンチで厳しい表情の立浪和義監督(左)と和田一浩コーチ(2023年5月18日撮影)