一瞬で“阪神ムード”にしてみせた。30日、交流戦開幕ゲームとなる敵地西武戦。阪神近本光司外野手(28)が初回の第1打席、右翼への三塁打でチャンスメークした。プレーボールからインパクトまで、わずか5秒の出来事。クイックで投じてきたアンダースローの西武与座の初球を捉えたものだ。
「プレーボールでクイックだったので、『あっ』て思って。『あっ』って打ってます」。独特な表現で“反応で打った”ことを強調。直後、2番中野拓夢内野手(26)の三塁打で生還した。
チームに得点をもたらした以上に、大きいことがある。この一打にそんなことを感じた。
「1番打者であれば、僕は初回の第1打席にこだわっている。相手投手の立ち上がりにインパクトのある打球を打っていきたい。実際は良いボールが来ていたとしても『カチン!』と捉えることができれば、相手は『アレ? 思ったよりもいってないのかな』となる場合があるから。こちらのベンチも『あっ、今日はボール、来てないんちゃうかな』と思えることも、けっこうある」
近本の「1番打者論」だ。結果はもちろん、打球の質が高くなればなるほど、相手先発への精神的ダメージが大きくなりえるという。2番以降もつなぎの野球ができている今の阪神なら、近本が凡打でも、後続がチャンスを作る可能性は決して低くない。
大型連勝で、波に乗った状態で入った交流戦とはいえ、勝負の世界は何が起こるか分からない。初回から主導権を握られていれば、結果は変わっていたかもしれない。そういった意味で、近本の三塁打からの先制ホームインには、1点以上の価値があったと思う。
47試合を終え、今季60安打は広島秋山に7本に迫るリーグ2位。打率3割2分4厘はリーグ5位と、好数字が並んでいる。
「明日になったらどう変わるかも分かんないんで、意識だけで変わってくるんで、調子も狂ってくるんで。ま、いつも通りやるだけです」
虎のリードオフマンは交流戦初陣を終え、そう言い残した。どこまでも頼もしい男の第1打席に、注目し続けたい。【阪神担当 中野椋】