「久しぶりです。何とか元気にしてます」。8月3日。夏の甲子園の組み合わせ抽選会が大阪市のフェスティバルホールで行われ、仙台育英(宮城)・須江航監督(40)と囲み取材の場で約5カ月ぶりに“再会”した。
ソフトバンクの番記者になる前、22年夏に東北勢初の甲子園優勝を成し遂げた須江監督には何度も取材をさせてもらった。須江監督への取材は、私自身、社会人として気づかされることも多く、今も印象に残っていることがある。
甲子園で優勝した世代が新チームで始動したばかりの秋頃。記者は「主将は誰になったんですか?」と聞くと、須江監督は「主将はいません。秋はリーダーを置かないです」と言った。新チームで主将が不在…。以前、他の強豪校の監督は言っていた。「新主将が迷わずにスッと決まる世代は強い」と。だが、須江監督は「リーダーの思いのもと、目標に対して進んでいくことができるレベルに達していません。個性が強く、人間としての成熟度もまだまだです。自らに対しての責任感、チームの中に置かれている自分の役割や自覚が足りていないと思っています。誰かをリーダーに据えたことによって、おんぶに抱っこになってはいけません。リーダー自身のストレスに変わってしまうこともあります。『誰かがまとめるじゃなくて、1人1人がまとまる』ことをまずは自覚してもらうためにです」と明確な意図があった。
さらに、須江監督は続けてこう言った。「アニメのルパン三世を見たことありますか?」。日本の名作のアニメを引き合いに出し、主人公のルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子で結成された一味こそが理想的な組織図だという。「ルパン三世の一味って、リーダーがいないんです。彼らは一味なんですけど、決定権や指揮権を持つ人間がいません。個人が自分の利益であったり自分たちの利益のために、自分の判断で動きます。自分の長所を生かして自分の判断で作戦を遂行させていくことに向き合っている。それが僕は最高の組織だと思ってます。おのおのが日本一を達成するためにどのような行動を取っていけばいいのか、どのような振る舞いをすればいいのか。判断して実行することが理想です」。
現在、記者は鷹番となり、「キャップ」と呼ばれる先輩記者たちの指示を受けることがほとんど。どこかおんぶに抱っこで頼り過ぎてはいないか。いま一度、ルパン三世の一味ではないが自らの長所を生かし、自らの判断で動く努力も必要ではないのか。須江監督との“再会”でそう考える1日でもあった。【ソフトバンク担当 佐藤究】




