「プロ野球生活は、人生のボーナスタイムなんで」

日本ハム北山亘基投手(24)の言葉だ。京産大から21年ドラフト8位で入団した右腕は「頑張っても、なれるかなれないかの世界。僕なんか本当に滑り込んで入れた。紙一重だったんで、ラッキーでしかない」と言う。

誰もが経験できない環境に身を置く幸せを感じるからこそ、「今も周囲に感謝しないといけない」と謙虚さを忘れない。だから、プロ入りが決まった時から、明確な目標も立てていた。

「プロに入って若いうちに、いろんなものを見ようと思った。トレーニングやコンディショニングの考え方について本もいっぱい読みました。そういった知識がない中で、こうだって決めつけるんじゃなくて、いろいろと知った上で、経験した上で、これじゃないかって絞っていく方が絶対に強いと思った。2年目までは、そういう期間にするって自分で決めてプロに入ったんです」

ファンにも浸透した「教授」の愛称は、トレーニングなどの知識の豊富さが由来だが、あえて視野を広げる必要性を自らに課し、怠ることなく実直に実行してきた証なのだ。

2年目の今季は中継ぎでスタートし、先発に転向して6勝。夏場から2軍暮らしとなったが、その間にプロ入りからの日々を振り返って「今は整理する期間」とも捉えた。有形無形を問わず、プロ3年目以降に必要なもの、そうでないものを振り分けた。いわゆる「断捨離ですね」。

いろいろと試したトレーニングやコンディショニングも精査した。昨オフに渡米して野球トレーニング施設「ドライブライン」を訪問。動作解析などを通じて見聞を広げ、今季は同施設のトレーニング道具も使用してきたが、その効果も理解した上で「辞めることにしました」と決断したのが、その一例だ。

「合う合わないとか良い悪いはもちろんあるんですけど、僕は、それはそれで1ついい考え方だなと思う部分もありました。でも、自分がやっている基礎的な取り組みの中に全部取り組めるなと思ったんで。わざわざ“外付け”でやる必要がなくて、自分が今やっていることに落とし込んでやれば、同じ効果になるのが分かったんで、意識としてそこだけちゃんとやれば、全然問題なく補えると思ったんで」

ウエートトレーニングも今季から本格的に取り組んだが、北山自身が経験して感じたのは「体に負荷をかけるって意味では、重りを持たなくても、自重トレーニングで全然同じか、それ以上の効果になる」ということ。そういった具合に、この2年間で蓄積したあらゆる知識、方法論などを洗い出し、取捨選択。進む方向性を明確にしたのは、「3年目からは、僕は本当に結果にフォーカスしてやっていくって決めていた」からだ。

1年目はルーキーで開幕投手を務めた後、セットアッパーや守護神も務め、今季は先発でも経験を積んだ。「(2年間で)ピッチャーのポジション、やってないところがない」という中で「やっぱ先発が一番いいですね。若い間は先発して結果を出せるのが一番理想」だという。目指すポジションも絞り込んだ北山の“ボーナスタイム”は、来季から第2章に突入する。【遊軍=木下大輔】