阪神が日本シリーズノーアーチで日本一になれば史上初となる。05年の第1戦から現在14試合連続ノーアーチ。すでにシリーズワースト記録を更新している。ここは今季レギュラーシーズンでチームトップ24本塁打の佐藤輝明内野手(24)に、不名誉な記録にストップしてもらいたい。

第6戦の舞台となる京セラドーム大阪は、佐藤輝が近大時代から好きな球場だ。近大時代から記者は取材してきた。プロでの自身のイメージを問われ「京セラの5階席に打球をぶつけるイメージですかね」と目を輝かせてきた。

プロ2年目の昨年6月12日オリックス戦で京セラドーム大阪初アーチを放った。K-鈴木から右翼の5階席の看板にぶち当てる推定130メートル特大アーチだった。今季も8月28日中日戦で1本放っている。

小学6年生の時に右肘を痛めていた佐藤輝は中学2年だった12年秋、この球場でうれしそうにキャッチボールなどで汗を流した。次男太紀内野手(現BCリーグ福島)が小学6年でオリックス・ジュニアに選出され、父博信さんと見学に来ていた。ようやく投げることを再開したばかりだった佐藤輝にとって、プロが使う球場で思い切り白球を投げた喜びは忘れられない思い出だ。

帰りの電車内で小学生時代の相手チームの監督とばったり再会。「あまり大きくなってないね」という一言に佐藤輝と父はショックを受け、見返してやろうと二人三脚で体を大きくした。のちに勉強部屋を筋トレルームに改造する佐藤輝の原点だ。

プロ3年目で体はますます強く大きくなった。この日本シリーズでは第3戦、第4戦は精彩を欠いていたが、フリー打撃では柵越えもシーズン中より多くたたき込んでいる。59年ぶりの関西ダービーの最終章で、佐藤輝らしい豪快な1発を期待したい。そしてミスタータイガースといわれるような存在に成長することを楽しみにしている。【阪神担当=石橋隆雄】