歴史的な制球力を見せ、阪神の新エースたちが「アレ」を引き寄せた。最優秀防御率の村上頌樹(25)と、12勝とブレークした大竹耕太郎の両投手(28)。四球を出さないという、強力な武器がものを言った。

村上の15与四球は、今季セの規定投球回を満たした12投手中、東(DeNA)と並び最少だ。与四球率(9イニング換算の与四球数)は0・94。投球回数の多かった東0・78に次ぎ2位で、0点台はこの2人しかいなかった。

また村上は、制球力と奪三振能力を計る「K/BB」で12球団断トツの9・13(137奪三振/15与四球)。これは2リーグ分立後に規定投球回に達した延べ2568投手中、実に4位に該当する。(1)09年ルイス(広島)9・79(2)59年杉浦忠(南海)9・60(3)00年工藤公康(巨人)9・25に次いだ。

一方の大竹も、相棒の村上に引けを取らない安定感を見せた。131イニング2/3を投げ、与四球は12しかなかった。与四球率は0・82で、村上をしのぐ数字だ。もし大竹が規定投球回を満たしてこの数字なら、こちらは2リーグ分立後6位タイにランクイン。(1)22年加藤貴之(日本ハム)0・67(2)50年野口二郎(阪急)0・69(3)23年東克樹(DeNA)0・78(4)62年土橋正幸(東映)0・79(5)79年高橋直樹(日本ハム)0・81(6)82年江川卓(巨人)0・82に続くところだった。

左右の両輪に引っ張られ、阪神投手陣の与四球数は今季両リーグ最少の315だった。一方の打撃面でチームは、12球団最多の494四球をもぎ取り、攻撃に広がりを持たせた。打線が選んだ四球数から投手陣が与えた四数球を差し引くと、179ものプラスである。これは1937年(昭12)春の+181(四球363、与四球182)に次ぎ、球団歴代2位。プロ野球全体でも7位である。四球における大幅な「黒字決算」が、日本一を支えていた。

【記録室=高野勲】(22年3月のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」準優勝)

阪神大竹耕太郎(2023年10月31日撮影)
阪神大竹耕太郎(2023年10月31日撮影)