天福球場の右翼後方にある雨天練習場の前で、温かくも厳しい視線を向ける人物がいた。ヘンディ・クレート通訳(40)だ。今季もドミニカ選手とともに1月末に来日。春季キャンプにもコルニエルのほか、2人の練習生の通訳として同行している。

この日、担当するコルニエルが雨天練習場で練習する中、タイミングを見ながらグラウンドの様子をうかがっていた。視線を送る先には、育成契約を目指す練習生のラミレスとロベルトがノックを受けていた。コーチ陣からの指示が、遠く聞こえる。だが、クレートは見つめたまま、グラウンドに向かおうとはしない。

「1人でもできるようにならないと。もし(支配下登録)選手になったら、自分1人でできた方がいい」

ドミニカ共和国にあるカープアカデミーは、広島流で鍛えられる。平日の月曜から金曜まで同じ施設で寝泊まりしながら、気温が上がる13時から16時を避けた午前と午後の計6時間みっちり練習する。今、行われているキャンプのような日々だ。現地では日本語教室が開かれ、グラウンドでも「ミギ」「ヒダリ」などと日本語が飛び交う。

来日17年目となるクレート通訳が練習生を見つめる表情からは“アカデミー出身選手ならたくましくあれ”という思いが感じられた。別の日には練習生を担当し、コルニエルは1人で投手陣に混ざって練習をする。入団5年目となれば、日本人選手とも笑ってじゃれ合う姿もみられる。

2人はまだ練習生ではあるが、ラミレスは特に2人の新外国人にも勝るパワーを連日のように見せつけている。クレートが求める日本への適応力が、彼らの成長、育成選手契約への鍵となるのかもしれない。【広島担当 前原淳】