見たことのない立ち上がりだった。2月23日、巨人とオープン戦(那覇)。先発の伊藤将司投手(27)は初回からプロ自己ワーストとなる7失点を喫した。昨季全21登板中、18試合でクオリティースタート(QS=6回以上、自責点3以内)を達成した左腕。抜群の安定感を誇っていただけに驚いたファンも少なくないだろう。
しかし続く2回、3回はともに3者凡退で無失点。初回を連想させない、全く危なげない投球で切り抜けた。では、初回の大量失点の要因は何だったのか。バッテリーを組んだ坂本誠志郎捕手(30)に尋ねた。
「1回は全体的に打つ、打たれないよりも、将司がそこに投げられるか投げられないか。どんなボールが来るかを判断したいというのもあったので。あまり相手の得意とか苦手とかは関係ない。相手じゃなくて、将司がどんなボールを実戦で投げるかというところを、まず一番で(試合に)入りました」
同戦はオープン戦の開幕戦。伊藤将にとっても今季2戦目の実戦で、初の先発マウンドだ。開幕戦を戦う巨人だからといって心を乱さず、バッテリーでの確認作業を最優先した結果だった。
「2回以降はプラスして、バッターの反応とか雰囲気を見ながら『こういう風に変えていこう』と投げていったのが、抑えることにつながったと思う。感覚的には1回とそれ以降は、やっていることは全く違うことをやっていますね。(ボールの)使い方とか、どこに投げるとか、どのタイミングで行くとか」
初回の投球に加え、より相手ありきの投球にシフトチェンジ。打者への攻め方も、初回とはガラリと変えたということだろう。4番岡本和から始まる2巡目の打線を封じ込め、見慣れた安定感を見せた。
岡田監督も「全然、何にも関係あらへん」と信頼は揺るがない。それでも、初回から見せつけられた巨人打線の猛攻。坂本は女房役として脅威も感じ取った。
「(打者の)反応を見ていたら、いろんなことをしようとしているのは感じた。また次のオープン戦とかシーズンで、反応を見ないといけない。注意しながらやらないといけない」
2年連続Bクラスに転じ、目の前で阪神の18年ぶりリーグ優勝を見届けた巨人。阿部新監督のもと、目の色を変えて挑んでくることは間違いない。3月29日の開幕戦から、今季の伝統の一戦も白熱した戦いになりそうだ。【阪神担当=波部俊之介】